2023-02-12のセッションより
《成果》と云ふ言葉を聞いて、映寫機は悲しみ、悔しんでゐる。
私は、言葉を掛け直す事にした。
「此處に殘された物を、私達に見せて下さい。」と聲を掛けた。
すると、映像の亂れは少しく穩やかに成った。
私は「ありがたう」と話し掛け、綠のローブの袖で映寫機の埃を拂って上げた。
今迄映寫機が何色をしてゐるかをは意識してゐなかったが、其の時、映寫機は綠色の金屬で出來てゐる事に氣付かれた。
私は、叮嚀に綠色の有線リモコンを左手に取り、右手をダイヤルに添へた。
===此處迄前回===
ダイヤルを囘す。
十枚目のスライド。
眞っ黑な背景に、薄青白いぼんやりとした垂直線が引かれて、畫面を左右に不完全に分割してゐる。
似た樣な青白い線で、分割された左側に、ぐしゃぐしゃと書いた樣なこんがらがった線が描かれてゐる。
畫面の上部には、同じ樣な線で弧が書かれてをり、左右を結んでゐる。
https://gyazo.com/5728f4826bee1e119b1198a53c6cb7e3
左手に染みてゐる水の事が氣に成る。
左手は少しぬるついてをり、酸に觸れた樣な刺戟感を伴ってゐる。
左手をよく見る爲に、リモコンを一旦映寫機の机の上に置く。
左手の水分の事を思った時、ランタンの方から引き寄せられる樣な感じがする。
私は意識を失った樣に成って、左手でランタンの持ち手を持つ。
左手がランタンの熱で灼かれてジュッとへばりついた樣なイメージが生じるが、實の所は灼けてゐない。
持ってゐて欲しいと云ふ感じが感ぜられた。
一旦左手を持ち手から離す。
水分の一部がランタンの持ち手の表面に殘ってゐる。
私は、幼い頃に石油ストーブの上に手を突いて火傷した時の事を思ひ出す。
右手で持ったらどう成るだらうと思って、今度は右手をランタンの持ち手に近づける。
ランタンの持ち手の表面の水分が、嫌がる樣に手から離れて行く。
其の儘右手でランタンの持ち手を持つと、ランタンはどんどんと熱く成って來る。
手を離せと云はんばかりに熱く成る。
私は手を離す。
ランタンからあの水が蒸發する樣なジュッと云ふ音がする。
私はランタンの斜め前に囘り、「如何したいのですか」と問ふ。
應へはないが、左手にランタンへの引力を感じる。
「何故持ってゐて欲しいのですか」と問ふ。
應へはないが、どうも、私が左手でランタンを持つ事で、ランタンは私を支配出來るのだらうと云ふ直感がある。
逆に、私が右手でランタンを持つと、私がランタンを支配出來るのだらうと云ふ直感も生じる。
私はランタンを持つのは已めて、映寫機に戾る事にする。
左手でリモコンを持ち、右手でダイヤルを囘す。
十一枚目のスライド。
スライドが消えた樣に眞っ暗に成る。
何が寫ってゐるのか良く判らない。
良く見ると、畫面の緣に沿って、電球色のグラデーションが掛ってゐる。
https://gyazo.com/904afb372e042ba94cc0d982e67744f2
【講評】
『左』が多い樣である。
最初のスライドも、上と左に圓がある。
その次のスライドも、良く判らない物は左にある。
逆に『右』が空っぽなのが氣に成る。
未だ硏究されてゐないのか……?
或いはスライドを置いて何かすべきなのかも知れない。
意識を失って、イメージの方が意識を持って勝手に動いたシーンや、
イメージの外に出て來て(イメージをほったらかしにして)次に何をすべきか考へてゐる事があった。
此れ等は望ましくない。
息を詰めない。呼吸を止めない。自分が自分の意志で行動する。
相手を輕んじない。しかしイメージの主人公は自分である。(イメージの中にゐる。)