2023-01-25のセッションより
ゆっくりと一步〳〵階段を上がる。
上がり終ると、右手側に空間がある。
階段の天邊から右に眞っ直ぐ伸びる廊下と、180度右に折れて後ろ方向に伸びる廊下。
散らかってゐる。床に書類の束や段ボール箱が亂雜に置かれてゐる。
===此處迄前回===
廊下を觀察する。
廊下には段ボール箱や書類の束が打ち棄てられてゐる。
茶色い埃が床に 積もってゐる。
全體的に薄暗い。が、明りはある。ぼんやりと照らしてゐる。
手許のランタンは照ってゐるが、其れ丈では明りが足りない。
此處で動作が生じた。
私はランタンを左手に持って、其れを左下から正面上に揭げた。
揭げると、私の物を見たいと云ふ意志に呼應してか、ランタンの明りが強く成った。
其の明りで廊下を照らし、物をもっと良く觀察できる樣に成った。
すると、今迄見えてゐなかった棚が向って右の廊下の左の壁に置いてあるのが見えた。
棚は金屬で出來てをり、嘗ては書類を澤山收めてゐたのだらうが、今は幾つかのバインダーが殘ってゐるばかりである。
バインダーは、今手に取っても、中身が空である樣に感ぜられた。
床に置いてある書類と照らし合はせると、嘗て此處にゐた研究者達が、バインダーから書類を取り出し、大切な部分を持ち去って、不要な部分を束ねて置いて行った樣に思はれた。
書類の方を觀察する事にした。
書類は麻紐の樣な物で十文字に縛られてゐた。
其れをよく見るために、私は振り返り、書類の山に歩み寄って、ランタンを別の書類の山の上に置いて、書類の束に近付いた。
兩手で麻紐を解いた。
一枚目は、内容がぼんやりしてゐて、良く讀めなかった。
一枚目を橫に置き、二枚目を手に取った。
二枚目には、グラフの樣な圖が二つ描かれてをり、殘りは橫書きの二段組みでテキストが書かれてゐる。
テキストの内容は、此の研究所で行はれてゐた、生き物に關する實驗の報告である樣であった。
此の研究所では、生き物の有り樣を自在に操作する方法を見出だす爲の實驗が極祕裏に行はれてゐた。
生き物の指の數を增やしたり減らしたり、目の數を增やしたり減らしたりする方法に就ての實驗の結果が、報告されてゐる樣だった。
研究所の目的は、人類の在り方其の物を變更する事であった。
研究所の中の何處かには、實驗に使はれた生き物の遺骸が殘されてゐさうな氣がした。
研究所の中を移動する事にした。
書類を置いて、ランタンを手に取り、廊下の奧に向って歩き出した。
赤い圓筒形は、怯えてゐるのか、積極的に歩き出さうとはしないので、此方に來る樣促す必要があった。
少し進むと、左の壁に、階段が現れた。
階段を上る事にした。
赤い圓筒形を右腕で抱へて、其の重みを感じながら、階段を上がって行った。
踊り場で振り向いて更に上がると、上の階の廊下に出た。
右の前には兩開きのドア。左にはまた廊下が延びてゐる。
後ろには更に上に續く階段があった。
右の前の扉を開いて中に入ると、カンファレンスルームの樣だった。
部屋の中央にはロの字型に三人掛けテーブルが竝べられてゐて、椅子が放置されてゐる。
向って右の壁(部屋の正面に當る)には、白いスクリーンが下がった儘に成ってゐた。
部屋の中央、ロの字の机の眞ん中には、プロジェクターが置かれてゐた。
机から離れた所にも、椅子が幾つも放置されてゐた。
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【講評】
ギリ〳〵の所を試されてゐる樣に思はれる。
氣を付けて、但し、覺悟して、進んで行きませう。
出て來るものは全て私の一部である。
坑道を掘ったのも。硏究をしてゐたのも。生き物の遺骸も。
赤い圓筒形は、やはり、稚い振舞をしてゐる樣子だ。