ハッカーズ大辞典
Jargon(「技術用語」のように正式ではないけど「スラング」ほど俗っぽくもないハッカーの俗語)を辞典としてまとめた書籍
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P304
n.1. 情報共有は有効で明白な善であるとし、無料ソフトウェアを書いたり可能な限
り情報や計算資源へのアクセスを促進したりことによって、自分の技術を分け与える
のがハッカーの倫理的義務であるとする信念。2. 盗んだり破壊したり機密を侵したり
しない限り、遊びや探求のためにシステム破りをしても倫理上問題がないとする信念。
この2つの規範的同律は、どちらもハッカーの間に広く(ただし決して全員にで
はない)浸透している。ほとんどのハッカーは語義1のハッカー倫理に賛同しており、
無料のソフトウェアを書いて配ることによってそれを実践している。さらに一歩進ん
で、すべての情報は無料であるべきであり、情報のいかなる専有管理も悪であると主
張するハッカーもいる。これがGNUプロジェクトの背景にある哲学だ。
語義2については議論がある。クラッキング自体が住居不法侵入同然の非倫理的行
為だと考える人もいるからだ。しかし「倫理にかなった」クラッキング破壊行為はそ
ぐわないとする信念のおかげで、少なくとも自分を「良性の」クラッカーとみなす人々
の行動が律せられている面はある(samuraiを参照)。この観点から言えば、(a)システ
ムに侵入し、(b)できればスーパーユーザー(superuser)のアカウントから、電子メー
ルでシスオペに対して侵入方法と穴のふさぎ方を説明してやる、というのがハッカー
流の最高の礼儀と言えるかも知れない。つまり、無料の(おせっかいな)タイガーチー
ム(tiger team)として行動するのだ。
【背景】どちらのハッカー倫理からも一番顕著に見てとれることは、ほとんどすべ
てのハッカーが、技術上のトリックやソフトウェアや(可能なら)計算資源をほか
のハッカーと共有したいと積極的に望んでいる点だ。このようなハッカーの特質
のおかげで、Usenet、FidoNet、インターネット(Internet address を参照)など
の大規模協同ネットワークが中央制御なしに運用できているのだ。こうしたネッ
トワークは、ハッカー王国のもっとも貴重な無形の資産と言える連帯感に依存し
ていると同時に、それを強化する役割も果たしている。
samurai [原議: サムライ]
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P495
n. 合法的なクラッキング作業に雇われたり、企業内の権力闘争で派閥の密偵として雇
われたり、プライバシー権や憲法修正第1条* に絡んだ訴訟を扱っている弁護士に雇
われたり、その他、適法な理由で電子的錠前師を必要とする人々に雇われるハッカー。
【訳注】言論や宗教などの自由の保証。
【背景】1991年に、BBSシステム上で電子的に出会ったサムライ(samurai)たち
が漠然と形作っている文化が一般のメディアによってレポートされた。彼らはほ
とんどがパーソナルコンピュータを所有する聡明なティーンエージャーで、日本
の昔のサムライと、William Gibson のサイバーパンク(cyberpunk)小説の「ネッ
トカウボーイ」が自分たちの手本になったと名言している。インタビューによる
と、彼らは雇い主への忠誠という倫理を堅く守っており、犯罪的なクラッカーが
しでかす破壊と窃盗をハッカー倫理に反するものとして見下し軽蔑しているとい
う。自分たちの原則を用語するため、昔のサムライの道義について論じた宮本武
蔵の『Book of Five Rings』(五輪書)という名著を引き合いに出す者もいた。
sneaker、Stupids、social engineering、cracker、hacker ethic、dark-side hacker も参照。
tiger team [合衆国軍隊用語]
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P557
n.1. もともとは、セキュリティを破って、それによってセキュリティ手段をテストす
る任務を帯びた(侵入屋(sneaker)たちの)チーム。このチームの人々は正規に雇われ
た専門家で、たとえば重要な軍事施設に「爆弾」と書いたボール紙の看板を置いてきた
り、「お前の暗号表は頂戴した」(実際は盗まれていないのが普通)という手書きのメ
モを金庫に残してくるなどといったハッカーっぽいトリックを実行する。侵入に成功
した翌朝に保安部門の高級将校が「セキュリティ調査」にやってきて看板だのメモだの
を発見すると、大パニックが巻き起こる。タイガーチーム(tiger team)がゆゆしき成
功を収めてしまったあかつきには、基地司令官や保安担当将校の早期退役につながる
場合もある(実例は patch の項を参照)。2. 最近は、そしてより一般的には、問題を調
査するために呼ばれる任意の正式な検査チームまたは特殊な消防隊(firefighting)。
タイガーチームの部分集合に職業クラッカー(cracker)たちがいる。彼らはネット
ワークや「安全」と称される通信チャンネルを通して遠隔攻撃を試み、軍用コンピュー
タ施設の安全性をテストする。機密指定が解除されればの話だが、おそらく彼らの武
勇伝の中には、史上もっともすごいハックのランキング入りを果たすものがいくつか
あるはずだ。商用コンピュータセキュリティ業界では、タイガーチームという用語は
このやや狭い意味で使われている。
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