オートファジー
「オートファジーのメカニズムの発見」により、大隅良典さん(東京工業大学栄誉教授)に2016年のノーベル医学・生理学賞が贈られました。オートファジーは、酵母や植物、動物など、すべての真核生物に備わっている細胞内の浄化・リサイクルシステムです。細胞内の変性タンパク質や不良ミトコンドリア、さらには細胞内に侵入した病原性細菌などを分解して浄化することで、さまざまな病気から生体を守っています。また栄養状態が悪くなったとき、過剰なタンパク質を分解して、生存に必要なタンパク質にリサイクルします。
細胞が持つリサイクルシステム
「オートファジーは、タンパク質や脂質だけでなくミトコンドリアなど、何でも分解することができます。ただし、分解し過ぎて細胞が死に至ることは、普通はありません。何でも分解できてしまう危険な仕組みが必要なときだけに始まり、不要なものを選択的に分解するように高度に制御されています。そこがオートファジーのすごいところです」と野田さんは言います。
高度に制御されている
ところが、21世紀に入って状況が一変。1990年代の半ばまで世界で年に数十本しかなかった研究論文の数が、いまは優に3000本を超えるようになりました。しかも、日本が研究をリードしているんです。
日本がリードしている
比較的最近
オートファジーの「オート」は「自己」で、ファジーは「食べる」(どちらもギリシャ語)。
自己を食べる
不思議なことに、小さな掃除機のような器官が突然現れ、細胞の中を掃除する! そう、まさに突然、何もないところから掃除機が現れるんですよ。古くなったり壊れたりしたたんぱく質やミトコンドリアといった細胞内の小器官は、これにより除去されます。さらにオートファジーがすごいのは、集めた“ゴミ”からたんぱく質の材料を作り出すところです。成人男性は1日に約200gのたんぱく質を合成しているのですが、体内に取り入れるたんぱく質の量は60~80gしかありません。その差は、オートファジーが補っているんです。
食べるマンが出現して食べるし、たんぱく質もカバーしてくれる
その他にも、糖尿病や動脈硬化、痛風、がん、クローン病などを、オートファジーによる「細胞内の清掃」が防いでいることがわかってきました。このうち、がんに関してはオートファジーの「働き過ぎ」も重要です。がんは飢餓状態に陥りやすい細胞なのですが、オートファジーが活発でどんどん栄養をつくり出せばなかなか死んでくれない。放射線や抗がん剤を使った治療を行ったとしても、自己修復して生き残ってしまうのです。
オートファジーにより有害化の予防ができるが、既に有害が存在する場合はそいつを守ろうと動いちゃうので逆に抑制しなきゃいけない