認知科学の方法
認知科学の方法
東京大学出版会
1986年12月
2007年 新装版
ポイント
ハイデガーの解釈学的現象学を拡張して「道具を作る」営みを説明する
認知科学の理論を、多様な文脈のなかでそれぞれに適した多様な「表現」に読みかえられる「表象」の科学であるとみなすことを提案(p.216-217)
文脈に適した多様な「表現」とは
たとえば、装置の操作を学ぶ際に、自分の作業に関連してもっとも都合のよい「略図」( #スケッチ )を描くこと 現実世界とのかかわりのなかでの、吟味の道具として、活動の目的と状況にあわせて「あらわすもの」
「表現」の妥当性は、非・道具的接面の追跡によって獲得する以外にない。
テリー・ウィノグラード、フェルナンド・フローレス、「コンピューターと認知を理解するー人工知能の限界と新しい設計理念」(平賀譲訳、産業図書、1989 (原著:Winograd, Terry; Flores, Fernando, "Understanding computers and cognition: A new foundation for design", Ablex Publishing, 1986). 佐伯先生が認知科学との関連でハイデガー哲学を知ったのは "Understanding computers and cognition: A new foundation for design" による。
本書の発売と同じ年であり、最新の議論が掲載されていたことになる。
佐伯先生としては、
人工知能に対するあまりにも否定的な見方には同意しかねる点があり、結局、本書では筆者独自の考え方からハイデガー哲学と人工知能、あるいはインタフェースについて語ることにした(「認知科学の方法」p.237)
須永先生は筑波大学大学院博士課程のなか(1985年以来)、佐伯先生ら認知科学の集まりに参加されていた。
1993, 1994年には東大佐伯研と多摩美須永研との共同授業「Design meets Learning (Design meets Education とも言っていた)」が実施された。(「デザインの知恵 p.157」) 1995, 1996年には、デビット・ケリーの招聘でスタンフォード大デザイン学科に籍を置き、ウィノグラードとケリーのHCIプログラムに参加。(「デザインの知恵 p.159」) 1986年から1996年にかけての、佐伯先生、須永先生、ウィノグラード、の緩やかな関係(の一部?)はこんな感じ。