ITRON
μITRON仕様はそれまで、ソフトウェアの移植性よりも、ハードウェアやプロセッサへの適応化を可能にし、実行時のオーバヘッドや使用メモリの削減を重視する「弱い標準化」の方針に基づいて標準化を行ってきました。「弱い標準化」の方針によりμITRON仕様は、8ビットから32ビットまでの広い範囲のプロセッサに適用可能なスケーラビリティを実現しました。ところが、ソフトウェア移植性の向上とスケーラビリティの実現は矛盾する面が多く、一つの仕様で両者を同時に実現することは困難でした。そこで1999年に公開したμITRON4.0仕様では、「スタンダードプロファイル」と呼ぶ標準的な機能セットとその仕様を厳格に定めるというアプローチを採用し、仕様全体としては「弱い標準化」の方針を維持しつつ、ソフトウェアの高い移植性を実現することを可能にしました。
その後、2002年にT-Engineプロジェクトが開始され、トロンプロジェクトにおける最先端リアルタイムOS の標準化活動の場は、次世代OSのT-Kernelシリーズに移りました。それにともない、μITRONからT-Kernelにスムーズに移行したいというニーズが出てきました。これに応える形で、2006年に公開したμITRON4.0仕様Ver.4.03では、μITRON3.0、 μITRON4.0、T-Kernel において同等の機能を持つサービスコールを規定した「ベーシックプロファイル」を設け、このプロファイル内で動作するミドルウェアやアプリケーションであれば、μITRON からT-Kernel への移植をより容易に行うことができるようにしました。 https://www.tron.org/ja/wp-content/uploads/sites/2/2015/03/itron_kaisetsu.gif