火の神話学 第1章 火と人類の進化
#### 1 最初に火を使った人類とは
#### 2 火の受動的使用から独占的支配へ
ある土地に火を放つことは、今の言葉で言えば、投資であり、土地の使用権の行使であり、労働者の使役であった。そこから新たな人間関係が生じてくるであろうことは、明白である。それらは、やがて集団内の、あるいは集団間の階級を生むことになる。
火を支配することのできた集団は、それが不可能な集団に対して、圧倒的に優位に立ったと思われる。火を持たない集団は生き残ることができなかった。
結局、人間集団のすべてが火を支配するようになった。つまり、人間だけが火の所有を独占した結果、火の支配は人類の普遍的属性となったのである。
土地の開墾、料理、火のもたらす安全性・快適性――この三つの要素こそが、人類に火を独占させる契機になったと考えられる。同時にこの三つの要素こそが、火が人類の普遍的属性であることの意味を、最も雄弁に物語るものに他ならないのである。
#### 3 料理と人類の進化
このような歯の縮小、大きな脳と体へのエネルギー供給、小さな胃腸、新たな生活領域の拡大といった証拠を見るならば、この時期に料理が誕生し人類の進化に貢献したと考えられる、とランガムは主張する。
(中略)
というわけで、解剖学上の大きな変化ということからすれば、ホモ・エレクトスの出現の時期こそ、料理の始まりであり、最初の火の能動的な使用であったと考えられる。ランガムはこのように、料理の起源をヒトの進化の開始時期と同じだと考えた。ただ、その考古学的な証拠の存在ということになると、既に見たように、ネアンデルタール人の時期にまで下ってこなければならないことを、われわれは明白に記憶しておく必要がある。
『技術からみた人類の歴史』山田慶
ブリア・サヴァラン
人類が母なる自然を手なづけたのは火によってである
チャールズ・ダーウィン
料理は、言語を除いて、人類が生み出した最大の発見である
ランガム
「自然界に存在しない、異様に柔らかい食物を食事に取り入れることによって、ヒトという種は消化の重労働を軽減し、エネルギーを大いに節約することができた。体がやらなければならない仕事を、火が代わりにしてくれた。」
つまり「料理はカロリーの源なのだ」。
#### 4 安全性と快適さ、火の制度
彼は、その後新しい料理法が次々に発見され、その結果、ヒトの消化の効率はさらに高まり、多くのエネルギーを脳の成長にまわせるよになった、と言う。
彼=ランガム
その結果、料理は自給自足の生活を終わらせる(カトリーヌ・ペルレ)。
F・フェルナンデス・アルメスト
「火を制御できるようになると、必然的な結果として、共同体が一つにまとまった。火を管理するには分担して仕事をする必要があったからだ。火が中心としての機能を果たすようになったのは調理に使われはじめる前のことであり、調理とは関係がなかったと思われる。火には、調理以外にも人を集める作用――明るさや暖かさ、有害な動物や肉食動物からの保護――があるのだ」
つまり、そうした新しい社会的関係を生む基本的要素こそ、火の使用がもたらす安全性と快適性であった。
Gバシュラール
炉の中に閉じこめられた火はおそらく人間にとって夢想の最初の主題であり、休息の象徴であり、休息へのいざないであった。燃え上がる薪を前にした夢想なくしては休息の哲学を理解することができないだろう。
危険な動物から身を護ることができる火を得たことで、人間は心からの安心と休息を手に入れた。その結果、思索が始まった。あるいは、火を囲んで昔話や物語を語る者も現れただろう。
考え事をしているとき、煮詰まって気分転換に風呂に入ったとする。そんなメモも取れないときに限って、ふとアイデアが思いつくことがある。これは安心を手に入れてリラックスしたことで、脳が働き始めたことによる。
遊びも、儀式も、宗教も、社会も、このような休息の時間から生まれた可能性が高い。
このような火のもたらす安全性と快適性は、火を集団生活の中心に据える。そしてその結果、集団の意思の疎通や結束を強めた。長い期間に渡る火の規則的な使用は、単なる利便性を超えて、人間社会に固有の「火の制度」(ハウツブロム)を形成するに至る。
Gバシュラール
火について我々がまず最初に認識することは、火に触ってはならないということである
2019/2/14雑感
食糧生産革命
暴食
養老孟司
『思考の整理学』