半導体
半導体の製造は、大きく2つの工程に分けられる。
半導体の素材である「シリコンウエハー」に回路を書き込む「前工程」と、ウエハーを切り分けてチップにして最終製品にする「後工程」だ。
レゾナックは、この後工程に使われる数多くの重要素材で、高い世界シェアを握る。 微細化の時代は、同じ大きさのチップに回路をたくさん書き込んで性能を上げてきた。しかし、性能が大幅に上がってもチップの価格は上がらなかった。
だが、GPUやHBM(広帯域幅メモリ)などの先端半導体は高くても飛ぶように売れている。後工程のパッケージ化で性能を高めた半導体には高い値が付くようになったのだ。
だからこそ、前工程の大手が後工程への投資を進めているわけだ。
後工程材料で世界シェアトップ
【世界シェア1位】
ソルダーレジスト
銅張積層板
熱伝導材(TIM)
ノンコンダクティブフィルム(NCF)
【世界シェア2位】
固形封止材
アンダーフィル
シリコンバレーに拠点を設ける狙いは、ずばりGAFAMとの関係強化だ。
これまで、半導体の研究開発は生産拠点であるアジアを中心に行われてきた。
だが、生成AIによってアメリカが最先端半導体の開発拠点になってきた。
「技術開発のニーズを持っているのは、生成AIの担い手であるGAFAM。彼らのニーズをいち早くキャッチして、パッケージや素材、製造装置のプロセスの研究開発を加速させたい」(レゾナックのエレクトロニクス事業本部の阿部秀則副本部長)
レゾナックに限らず、日本の半導体材料メーカーは世界で強いポジションを築いている。
OMDIAの調べでは、半導体材料の世界シェアの56%を日本企業が占めている。
だが、弱点もある。
世界シェアは高いものの、市場が小さく、規模の小さな会社が多いため、買収の標的になりやすいのだ。
こうした危機を回避するため、フォトレジスト大手のJSRやパッケージ基板大手の新光電気は非上場化し、競争力を高めたうえで再度上場する道を選んだ。
生成AIの開発が加速する中、トレンドに乗り遅れれば、あっという間にシェアを奪われかねない。
レゾナックの阿部氏も「半導体は今、転換期を迎えている。うまく対応できないとシェアを失う可能性もある。シリコンバレーに進出するのは、そうした危機感の表れだ」と思いを吐露する。