船
「多くの人達の手を通して建造される船。でも完成した船の姿を目にする時、携わった人たちの心には「"俺が"造った船」という言葉が湧いてくるに違いない。船は女性名詞、男性が産める唯一の娘だ。」 『20話でつづる名船の生涯』「発刊の言葉」
「船出のときは「それは美しく」、やがて船乗りたちの「巨大な機械」となり、そして最終的には水夫にとって、とりわけ奴隷たちにとって「浮かぶ牢獄」となった。船上のほとんど全員が、なんらかの意味での囚われ人であり、ひとつの社会制度と化した恐怖と死のシステムの犠牲者であった。」
「船は基本設計者にとってはあたかも娘のように感じられるもので、骨の折れた船、手のかかった船および苦労の多かった船、いろいろの意味でむつかしかった船ほどいっそう愛着を持たれるものなのであることは、世話をやかせる子供ほど親にはなおかわいいというものと全く同じことである。」
「船舶ハ国土ノ延長ナリトノ言葉ハ、客船ニ於イテ其意義一層深ク且ツ明ラカナリト言ハザルヲ得ズ。世界各国ノ老若男女ガ日章旗トニ引キノ旗ノ下ニ安ジテ其生命財産ヲ託シ、其航海ヲ享楽スルノ事実ハ、即チ我社ノ信用ト名声トヲ愈世界的ナラシムルト共ニ、延イテ我国威ヲ四海ニ宣揚シ、我ガ国力ヲ欧米人ニ端的ニ認識セシメ、我国民ニ対スル彼等ノ偏見ヲ緩和シテ国際親善ノ助長ニ貢献スルモノナリ」 『日本郵船百年史』※孫引『増補 豪華客船の文化史』
「海運は昔から、物流の重要な手段であり、国内国際を問わず、経済活動の動脈の役割を果たして、今日にいたっている。その物流を形造り、促してきたのはほかならぬ人間であった。」「筆者は幼時から船に愛着を抱いてきたが、その歴史に接するほどに、客船の転変のもつ「人間的なもの」に惹かれ、この世の歴史は、人間と客船が造りあげてきた、という感じを抱くようになった。」