偶然性がまずあった
偶然性
ユク・ホイの論文で、おそらく思弁的実在論などをベースにしてるっぽい?
以下は、Yuk Huiによる論文 “Sketch of an Axiology of Contingency” (Angelaki, 2023) の日本語要約です。
🌀 全体概要
著者は「偶有性の価値」を問う新しいアクシオロジー(価値論)を提案します。論文はヨハネ福音書の三位一体構造(「はじめに~」)を借りて三部構成になっています。偶有性(contingency)とは、様々な領域で価値をもたらす鍵的概念とされます
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1. はじめにこそ偶有性がある(Being of Contingency)
従来、偶有性はモーダル論理(可能性・必要性)として扱われますが、本論文では「不確定さこそ知の出発点」であると主張。
ハイデガーを引きつつ、ベートーヴェンやヘーゲルを参照:即時的・抽象的な経験(偶然)は、弁証法的な動きを伴ってこそ「真の知識」に到達する 。
政治思想にも応用:投票や市民権といった偶発的な権利も、行使されて変容することで「自由」となるという見解。
2. 偶有性は本質を帯びる(Essence of Contingency)
偶有的越境(chance)が組織(determinacy)と同価値であることを、ヘーゲル/サイバネティクス(ウィーナー vs シャノンのエントロピー)、イアニス・クセナキスの確率音楽、カンディンスキーの「内的必要」によって解説。
偶有性(ノイズ)も組織に必要なのだとし、「ノイズこそシステムを動かす価値ある条件」として再定義 。
3. そして偶有性こそ神である(Ultimate Value of Contingency)
因果関係を逆転させ、偶有性を「準原因(quasi-cause)」として位置づけ。
ストア派の非身体的な因、ドゥルーズのロジックとつなげ、ニーチェの病やジャンゴ・ラインハルトの指の事故、スティーグラーの獄中成就などを実例に挙げる。
これらの事件(偶発)は、主体の内部から生じる「主観的必要性」を触発することで芸術/思想を生み、「偶然」が主体を本質化する価値ある契機になると強調 。
📌 結論まとめ
テーマ 主張
偶有性の開始 知識も自由も、まず偶然から始まる。
偶有性の構成力 ノイズや偶然は、秩序と対立しつつも必須の役割を果たす。
偶有性の最大価値 主体の変容を引き起こし、真の創造と意味を解放する源泉となる。
この論文は、伝統的な「偶有=非本質・価値なし」という見方を転倒させ、偶有性そのものが認識・倫理・芸術・主体化において中核的で創造的な役割を果たすと説いています。偶有性は「いかに生じたか」ではなく「いかに生きるか、その中に価値を見出すか」が問われる概念的共和国と言えるでしょう。
エリックカンデルの「偶然性に秩序を与える」芸術論。