3.1受動素子(3)コンデンサ
◎コンデンサ(キャパシタ)とは
コンデンサ (キャパシタ:Capacitor) は抵抗同様,電気回路には不可欠なディスクリート素子である.
※日本では「コンデンサ」の呼称が長く定着していた.英語圏で Condenser は冷蔵庫の圧縮機や熱交換器,凝縮器なども意味する.このため,近年では日本でもキャパシタと呼ぶ傾向にある
両極は絶縁されているため,電圧に変化のない直流成分に対しては電気を通さない.
電圧が時間的に変化する交流成分は通過する.
※通過する=対極が電気的に反応し,時間的に位相ずれが生じる
図3.6 の上が一般的なコンデンサ,下が極性のある電解コンデンサである.
極性がある場合,+側端子が-端子に対して相対的に電位を高くする必要がある.
https://gyazo.com/978b3f4876509517d07953477c19984d
図3.6 コンデンサ回路記号
※無極性の電解コンデンサの場合は上側の記号を使う
◎コンデンサの種類
コンデンサは抵抗同様,非常に用途が広く,材料や構造によって多くの種類および値の製品が存在する.
電気電子回路用の固定容量の主だったものを紹介すると以下のようになる.
フィルム (ポリプロピレン,ポリスチレン等)
セラミック
マイカ (雲母)
電解 (アルミ,タンタル)
電気二重層
これらはさらに使用材料によって細かく分かれる.
ちなみに精度や諸特性が優秀とされるのは,ポリプロピレン (PP コン),ポリスチレンといったフィルムコンデンサと,雲母を使ったマイカコンデンサで,許容誤差 ±1 %程度である.
※マイカコンは定格電圧が数百~数千ボルトと高い
※セラミックや電解コンデンサは ±10 %程度
コンデンサはその種類により静電容量の範囲がある.図3.7 に種類と値の範囲を示す.これらの特性と値の範囲に従って,回路に適したコンデンサを選ぶ.
例えば,pF のオーダーの静電容量が必要ならセラミック,さらに精度が欲しい場合はマイカや PP コン,数十 $ \mu F 以上の領域なら電解コンデンサといった具合である.
https://gyazo.com/4191961d91d62740a3817e39174c0364
図3.7 コンデンサの種類ごとの静電容量範囲
◎静電容量
静電容量の単位はイギリスの物理学者 Michael Faradayにちなんで [F](ファラッド) という.
ただしファラッドは一般的な電気回路に用いる電気容量としてはとても大きい値なので,通常は小さい単位,[pF](ピコファラッド:10−12) や [ $ \muF ](マイクロファラッド:10−6) が多く用いられる.
※日本では習慣的に $ 10^{−9} である nF(ナノファラッド) はあまり使われない.海外の回路では使われる
◎容量トレランス
コンデンサの基本機能は電気を蓄積・放出することである.
この蓄電量を静電容量(キャパシタンス:capasitance)と呼ぶ.
静電容量として記された値と実際の値とのズレを容量トレランスという.
※capacity tolerance. 抵抗器でいう許容誤差
容量トレランスのクラスを表3.4 の (a) と (b) に示す(JIS C60062 による).
※表記の通りでないメーカーもある
表3.4 容量トレランス(a)(b)と定格電圧 (c)
https://gyazo.com/bbe8e2e2e8c8f9950175bd273ad5ecf4
◎コンデンサの定格電圧
コンデンサに連続して印加できる最大電圧のことを定格電圧という.上表3.5 の (c)が定格電圧の種類である.
個々のコンデンサには,容量トレランスや定格電圧の情報が記載されているため,これらの情報の読み方を知っておく必要がある.
一般にコンデンサは製造技術上特性値の精度の高い素子を作ることが難しいため,容量トレランス 10%(E6系列)~20%(E12系列) 程度の製品が多い.
◎値の読み方
https://gyazo.com/39897a1ac89f1395286548ba1f60f443
図3.8 コンデンサの値表記:他にも様々な形状がある
図3.8 左側がセラミックコンデンサの値の読み方である.セラミックコンデンサには[pF] 基準で静電容量が記載されている.図3.8 左を例にすると,
"103K 50"と記載されている
"103"は,静電容量 $ 10 \times 10^3pF である
横の英字は容量トレランス."K"なので ±10% 以内(E6系)と読める
下の数字"50"は定格電圧.50[V] と読む.
図3.8 右が電解コンデンサの表記である.電解コンデンサは比較的パッケージが大きいので,本体に記載されることが多い.写真では読み取りにくいが,この例では
"47$ \mu F 10V" ← 静電容量と定格電圧が直接記載されている.
写真の向かって左側面に白い帯がある.この白帯側の端子がマイナス極である
※白帯がなければ無極性電解コンデンサ