3.1受動素子(1)受動素子とは
受動素子とは,供給された電力を消費・蓄積・放出する電気素子の総称である.
※受動素子:passive element または passive component
一方,能動素子とは,回路に印加された電気の性質(電圧・振幅・周波数等)を変える作用――増幅や整流・発信等――を生じる(トランジスタ・ダイオード等).
※能動素子:active element / active component
とりわけ,抵抗器 (Resistor),コンデンサ/キャパシタ (Capacitor),コイル/インダクタ (Inductor) は受動素子の基本三素子である.これらがなくては電気電子回路は始まらない.
それぞれの値と単位は抵抗値 (Resistance):Ω(オーム),静電容量 (Capacitance):F(ファラッド),誘導係数 (Inductance):H(ヘンリー) である.
回路図で使われる抵抗器,コンデンサ,インダクタの回路記号 (旧記号と新記号) を図3.1 に示す.
本テキストでは,新旧両方の記号を用いる.
※世間一般では慣習もあり,旧記号が使われている回路図が多い
https://gyazo.com/65472a652b0ac4a38eedbb00bab95047
図 3.1 受動素子の回路記号
受動素子には他にもコイルを使った変圧器 (トランス),センサなどに使われる圧電素子,ディジタル回路には欠かせない水晶振動子等がある.また,1971 年に存在が予見され ,2010 年に実現できることが明らかにされた第四の基本受動素子として,メモリスタ (Memristor) が注目されている. → 3.1受動素子(5)その他の受動素子 参照 受動素子と電源のみで構成された回路を「受動回路」と呼ぶ.
※受動回路:Passive Circuit,パッシブ回路とも
半導体素子を含む回路を一般に「電子回路」と呼ぶようになったため,現在では「電気回路」と言えば受動回路を指すことが多い.
※リレーは能動素子だが,歴史的にリレー回路は電気回路と呼ばれることが多い
◎受動素子の標準数値
数値の範囲については,受動素子に共通する考え方なので,ここで紹介しておく.
受動素子は微小電力から大電力まであらゆる回路に利用されるため,きわめて広い値を要求される.
実際には,素子に含まれる許容誤差に応じて誤差範囲が重ならないように値の刻みを考慮し,等比数列となる.
日本では JIS C 60063 で,E3~E192 系列(数字は分割数)が定義されている.
抵抗値の例を表 3.1に示す.ほかの受動素子も同様.
表 3.1 受動素子のE 系列数値表 ※E192 系列の表記は省略
https://gyazo.com/d0c29368f5e6fa01c58658411b03993a
一般には E3,E6,E12,E24 がよく使われる.
※例えば,50Ω丁度の抵抗はないので,E24の51Ωを代用するか,E48の100Ωを2つ並列にして作る.
誤差範囲が重ならない例として,許容誤差 ±5% の場合,1 桁を 24 個に分ける E24 の値と誤差範囲を示したものが図 3.4 である.
※実際の E24 系列では $ v_{n+1} = v_n\cdot 10^{\frac{1}{24}} の等比数例の値が少し修正されている
この図 3.4 に示されるように,各抵抗値の +5% と −5% の値は隣の抵抗値と重なっておらず,間も空きすぎていない.
※図に示されているのは 1 桁のみで,それぞれの桁でこの 24 種類が対応する
https://gyazo.com/221b72d253a2b884aea20c2793800637
図 3.2 JIS C 60063 の標準数列と E24 系列