2.4レポート作成の手順
実験が終了し,データが出揃えば,レポートの作成に取りかかる.
レポート作成についての一般的な手順を紹介しておく.
※これらの手順は絶対ではないが,理科系レポートの標準的手順なので,慣れておこう
※「物理実験の整理とレポートの書き方」(大場勇治郎, 洞史社, 1981, p.73~)を参照した.
(手順 1) 実験条件・データの確認
書き始める前に,実験条件と測定・算出した各データを確認する.
素子の値や電圧値などの条件はテキストに書いてある通りだが,担当教員から別途指示されたり,自分で変更することもあるので注意する.
結果・データは質・量共に十分に記録されていることを確認する.
その中からその実験の意図する目的を達成するのに重要なものを選ぶ.
※その際には多くのデータの中から重要なものを見極める判断力を問われる.不要なものはレポートに書く必要はない
条件や結果データが不十分だとレポートそのものが成立しない可能性がある.
※したがって,実験中はレポートを書くのに十分なデータが取れたかどうかを常に考えておく必要がある.
(手順 2) レポートの構成を考える
実験全体を見直し,レポートの構成・節立てを考える.
code:レポート構成例
1. 実験テーマの目的と原理
1-1. 目的
1-2. 原理
※本実験の場合は原理は簡潔でよい
2. サブテーマ (1)
2-1. 実験方針・方法・条件
2-2. 実験結果
2-3. 検討課題
2-4. まとめ
2-5. 考察
3. サブテーマ (2)
...............
以下同様
本実験では,各テーマの中にサブテーマが複数あることが多い.
回路や測定系を変更すればそれは別の実験になる.
故に,レポートではサブテーマ毎に独立した形で目的~考察を書くべきである.
(手順 3) 実験の目的と原理を書く
本実験のような確認実験はテキストに各テーマの目的が明記してある.実験の目的はこれ以外にあり得ない.
※確認実験とは原理・理論により結果がほぼ明らかになっていて,それを実証確認するような実験.逆に研究実験は,結果をだれも見たことがない実験
実験者はこの目的を正しく把握することがレポート全体の整合性の基本となる.
※整合性とは論理の正しさ.実験結果を,最初に述べた目的に沿って評価し,考察の前提としているかということ.これが狂えば頓珍漢レポートになってしまう
本実験の場合,原理については,テキストの丸写しをする必要はない.その特徴と実験方法とのつながりを簡潔に述べる.
(手順 4) 実験方針・方法・条件を述べる
※実験方針とは,実験目的に対してどういう実験系・測定系を構成するか,それはなぜかという理由
方針は主としてテーマテキストにある通りだが,自分でも考え理解すること.
テーマによっては方針が明示されず実験時に考える必要がある.その場合は,方針が非常に重要な意味を持つ.
実験条件は【実習課題】に詳細に記録してある.が,無理解にそれに従うのではなく,「なぜその条件なのか」を十分理解し,整理して提示する.
(手順 5) 手順と結果を記述する
実験手順は具体的に箇条書きする. → 【実習課題】に示されている
※原理と違ってすべて実際にやることなのでしっかり記述すること.
回路や装置の接続図も掲載するほうがよい.
※行った実験がテキスト掲載図と同じであれば,それをカットペーストして構わない.
結果はどの手順の結果かを沿って書く.
※対応する手順が不明だとせっかくのデータが意味不明になる
結果はまず文章から始めること.
図表や数値がある場合は,必ず文中で参照する.
※解説・参照なしに図表数値を提示するだけでは読み手から見て意味不明.
※本文で参照されていない図表は無視されるだけでなく「余計なものを含めた」として,報告書としては二重の減点となる
本実験の場合,手順ひとつひとつがあまり複雑ではないので,手順のすぐ後に結果を書くのが分かりやすいだろう.
例:手順 (1)⇒ 結果 (1) , 手順 (2)⇒ 結果 (2) ……
逆に,手順を全て記述した後,その手順に対応する結果をまとめて記述する書き方も一般的にはある.
例:手順 (1) 手順 (2) 手順 (3) ……,結果 (1) 結果 (2) 結果 (3) ……
※これは手順が複雑な場合にしっかり伝えることができる.
→ この場合は,結果記述の中にどの手順に対応しているのかを明示する
これらの書き方に正解はない.読み手に正しく伝わることが第一に考える.
★実習課題と検討課題
テキストには【実習課題】【検討課題】が示されている.
【実習課題】は実際に行う実験の手順が具体的に提示されている.
【検討課題】は結果について原理・理論との比較・確認を行う課題である.
※グラフの要件は重要である.どれが欠けてもグラフとしては見られないばかりか,ひいてはデータの信憑性を疑われかねない
(手順 6) まとめで結果を整理する
「まとめ(conclusion)」は,実験全体について「よかった」「だめだった」等,ざっくりした評価をする人がいるが,ここでいうまとめとはそういう大雑把なことではない.
※ちなみに「この実験をやって勉強になりました」のようなものは「感想」であり,レポートには不要.ただ,どうしても書いておきたい場合は,レポートの最後に別項目を立てて記述する.
実験結果,検討した数値を見やすく整理して示すことである.
書き方としては結果を各過程ででてきた値を一覧表形式にし,それに解説を加えるのがよいだろう.
(手順 7) 【検討課題】(原理の検証・応用)に取り組む
【検討課題】は結果からスタートして,原理や理論を検証していく.
これも当然報告書として読み手に伝える必要があるので,計算結果だけの羅列ではなく文章を書く.
(手順 8) 結果について考察する
考察(consideration または discussion)については次項目「2.5考察の方法」参照されたい.