所有せざる人々
アーシュラ・K・ル・グイン作/佐藤高子訳
ハヤカワ文庫SF・長篇
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概要
二重惑星であるアナレスとウラスという2つの星を舞台に、緑豊かで発展したウラスと植民途中で荒涼としたアナレスという異なる社会を交互に描く。
ヒューゴー賞・ネビュラ賞のダブルクラウン。
おすすめポイント
異なる社会の対比によって描かれる世界
ル・グインは文化人類学を背景に、空想の世界の社会状況を緻密に描き、現実の社会問題にも通じる様々なもんだを取り扱いました。本作は、その特徴がよく出たル・グインの代表作のひとつです。
本作の舞台のひとつである緑豊かなウラスは成熟した国家が複数存在しており、70年代当時の政治情勢、つまり資本主義陣営・共産主義陣営・第三世界の対立構造を反映しているように読めます。一方で、荒涼としたアナレスには政府にあたるような組織が見当たらず、そもそも私有財産を禁止しているなど、現実には存在しないような架空の無政府主義的な社会が実現されています。
ル・グイン本人によれば、本作はアナキズムを具現化することが目的だったとのことで、確かに作中には現実には存在しない無政府社会が実現されているようです。しかし、そのアナレスの社会は、作中でも語られる通り、ウラスという既成の社会から隔絶され、ひどく均質化された集団のみが存在し、しかも自然環境も極めて過酷であるという外的要因によって無政府状態であらざるを得ない、という状況によってのみ存在しうるもののように思います。主人公のシェヴェックが自ら手繰り寄せていった物語とともに、アナレスの社会を実現させるためのル・グインの葛藤が感じられます。
作中に登場する物理理論については、正直なところかなりつっこみどころが多いのですが、それは一旦置いておくといいでしょう。
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