イデア論
プラトンの思想の中核となる言葉で、不完全な現実の世界に対して、完全で真実である世界をイデアといい、プラトンによればそれは実存するのだ、という。彼はそれを説明するのに、有名な「洞窟の比喩」を使う。つまり、仮に牢獄である洞窟に閉じこめられていて、外の世界を知らない人は、外界から差し込む光による影だけが現実のものとして映る。それと同じように、実際の人が見ている現実は、イデア界の影にすぎないのだ、という。このプラトンの考えは、師のソクラテスから引き継いだ、ソフィストたちの相対主義的思想(プロタゴラスに代表される)を克服して絶対的な「真理の探究」をめざすものであった。しかし、その弟子のアリストテレスは、プラトンのイデア論に対し、現実こそ真実のものと見ることを主張した。両者の考えの違いは、大まかに言えばプラトンの観念論とアリストテレスの経験論という二つの大きな潮流の源流となり、後の西洋の哲学に流れ込んでいく。