【殺陣の知識07】技の名前(2)殺陣独自の動き他
五行の構え,斬撃九種の他にも,剣術の技に加え,殺陣独自(芝居上)の構えや斬撃がたくさんあります.
◆受けの構え
多くの構えは斬撃の準備です.しかし攻撃された時には受ける必要があります.
受けの構えもいろいろとあります.
柳,逆柳,胴柳,背負柳
受けの構え.右側に軸をずらし剣先が左になるのが柳,その逆が逆柳
胴柳は胴斬り(薙ぎ)を下から受け,剣先は下に向く
背負柳は背中への攻撃に対し低くなって刀を背負って受ける
→ 身を引いて刀を前に流す.相手は前によろける
横面受け(左右)
首を狙ってくる横面を受ける.
コツ:左右に受ける際には剣先を頂点にして二等辺三角形のように動かす
コツ:腕は下げたまま左右に受ける.相手の刀を迎えに行かない
※逆に腕を上げ,相手を迎えに行くとビビって見える(そういう芝居に使う)
鳥居受け
殺陣でよく使われる.左で刀身を支えて相手の斬撃(真向斬り)を受ける.神社の鳥居のような形になるのが名称の由来
→ 受けた後の動き: 盛り返して正面,左,右に跳ね返す,などにつながる
★鳥居受けのコツ: 鳥居受けは相手の力が強く,こちらに余裕があまりないことが前提.
※余裕がある時には鳥居受けではなく,体を躱したり柳で受ける
→ 刀が当たってから肘をダンパーのようにして衝撃を吸収する
十文字受け(無手での交差受け)
無手(素手)での受け.相手が上から振りおろそうとする瞬間に下からXに交差させた腕で受け,手を捻り返す
コツ:
1. 左手を前の十字(X字)にして相手の動きを食い止める.
2. 右手で相手の右小手を掴む
3. 左手は相手の左小手を掴み,
4. 両腕を右回りに捻り返す
※この他,無手での受けや捻り技は,実践的な古武術や忍道に数多くある
◆その他の構え
剣術から派生し,芝居でより見栄えする構えも多い.
縦一文字,横一文字
縦一文字は半身・腰だめで相手の斬撃をギリギリに受ける形
鍔迫り合いも同じような形になる
ここから押し返して回し袈裟斬りなどにつながる
横一文字は見栄の形.
一説には光を反射させて目くらましに使うとか
霞(左右,高低)
腰だめに刀を横に構える.基本は突きの準備動作
忍者の立合いなどでよく使われる
高い霞は両手持ちだけでなく前側にくる腕で刀身を支える形なども
その他
逆八相
揚羽(アゲハ)
等々,相手との手合の中での構えや動きは様々で,映画や舞台でもオリジナルなものがどんどん考案されている
●斬撃とは
構えからの攻撃の形.代表的な九種類だけでなく,以下のようなものがあります.
1.上から(斬り下し/真向斬り/袈裟斬り/山形/横面打ち/天地)
2.下から(斬り上げ/逆袈裟)
3.横から(薙ぎ/逆薙ぎ:高低あり/抜き胴)
※抜き胴は殺陣には欠かせない重要な技.胴切りを抜けないと怪我をさせてしまう
4.突き(平突き/正突き/逆突き:高低あり)
※殺陣では安全策として突きは相手の反対側に抜ける.つまり右突きなら左斜横(相手の右側)を突く
◆他の斬撃/返し技
上記以外にも,斬撃や返し技や動きがあり,構え同様,芝居だけのためのものもあります.
・血振り(様々な形がある):回転血振りは軽い竹光だからできる芝居だけの醍醐味
・横面(左右):相手の首を狙う.相手は横面受けで受ける
・山形(左右):芝居のみ.相手を外して大きく振り下ろす.相手はしっかり避ける動きをする
・合い山形:これも芝居の動き.相手の抜き胴とこちらの山形を合わせる
・斬り上げ(左右):これも芝居のみ.相手のすぐ横をまっすぐ切り上げる.相手はそれを飛んで避ける
・回転斬り:これも芝居.多くは左脇構えからの右回転.
コツ:左脇構えをしたまま回り,最後にスパッと刀を出すとカッコいい
・回し袈裟斬り:足を動かさずにその場で刀を回して引き斬り
・回し胴斬り:右斜め後ろの相手を胴切りする.背中に刀を落として胴切り
・燕返し(左右):袈裟斬りと逆袈裟斬りを素早く連続する
・鍔迫り合い:鍔での押し合い.この間に台詞のやり取りがあったりする
コツ:鍔をしっかり当てること.体を寄せる(力を入れる姿勢)こと
・摺り上げ・跳ね上げ:相手の斬撃に合わせて弾きかえし隙を作る
・巻き上げ・巻き落とし:相手の刀を巻き取ってさばく,または刀を飛ばしてしまう
・天地返し:天地の後,剣先をクルッと返して相手の刀をさばく
などなど.
細かい技や動きは際限なく出てきますね(^_^).