アブダクション
「見えていないところまで遡って、仮説を形成してそれで推論する」もの
パースによる帰納推論とアブダクション推論の違いの考察は非常に興味深い。帰納推論は、 観察した事例での現象・性質が、それらの事例が属するクラス全体についても見出されるという推論である。言い換えれば、観察される部分を、全体に一般化するのが帰納推論である。 それに対し、アブダクション推論は観察データを説明するための、仮説を形成する推論である。推論の過程において、直接には観察不可能な何かを仮定し、直接観察したものと違う種類の何かを複論する。たとえば、物体は支えがないと落ちるという結論は帰納的に導出できるが、この続編からは、「重力」という概念はどんなにがんばっても生まれてこない。 論は、なぜ支えられていないそノが落下するのかという現象に対して説明
を与えるものである。ただし、帰納推論とアブダクション推論がまったく質の異なる推論かというと、実際にはこの二つの推論の境界は曖昧である。科学において私たちの観察の限界を超えて帰納を広げていくと、推論はアブダクションの性格を帯びるようになるのだ。