豆論文
p.25 わたしたちが「手帳」に書いたのは、「発見」である。まいにちの経験のなかで、なにかの意味で、これはおもしろいとおもった現象を記述するのである。あるいは、自分の着想を記録するのである。それも、心おぼえのために、みじかい単語やフレーズをかいておくというのではなく、ちゃんとした文章でかくのである。ある意味では、それはそのままでも小さな論文──ないしは論文の草稿──となりうるような性質のものであった。すくなくともそういう体裁をととのえている。そのような豆論文を、まいにち、いろいろな現象をとらえて、つぎつぎとかいてゆくのである。
日常生活における知的活動の記録
p.39 大学ノートでは、ポケットにはいらないから、やはりちいさな手帳ということになる。しかし、これは単なるメモではなく、小論文をかくものである。
p.55 カードは、他人がよんでもわかるように、しっかりと、完全な文章でかくのである。「発見の手帳」についてのべたときに、豆論文を執筆するのだといったが、その原則はカードについてもまったくおなじである。カードは、メモではない。
そのかわり、豆論文にはかならず「みだし」をつける。カードの上欄にそれをかいておけば検索に便利である。「みだし」は、豆論文の標題でもいいが、むしろその内容の一行サマリーといったもののほうが、いっそうその目的にかなっているだろう。