読み手の喚起する力を刺激する
20世紀の社会科学では、人口の心理的充足感が「幸福=ハピネス」というひとつの概念で測られていた。それに対して、幸福をかたちづくる構成要素を分けて見てみよう、というのがウェルビーイングの考え方になる。たとえば、「ポジティブ心理学」で知られる心理学者のマーティン・セリグマン博士は、以下の5つの要素によって人間の幸福はかたちづくられると提唱している。 →日本版ウェルビーングの模索
1つ目が「autonomy=自律性」。自らの行動を自らの意志で決めること。2つ目が「compassion=思いやり」。他者のウェルビーイングを考え、それを満たすこと。そして3つ目が「acceptance=受け容れ」。思い通りにならない状況を受け入れ、自身の感情と向き合うことである。そしてこの「受け容れ」という概念こそが、日本的ウェルビーイングを考えるうえで最も重要になるかもしれないとドミニクさんは言う。
自律性が発揮されていると感じられる条件は何だろうか?
SNS上で交わされる短い情報や「3分でわかる◯◯」といったわかりやすい情報ばかりが増えてくると、読み手の「喚起する力」がどんどん弱まってしまう。そして、その人ならではの読み方をする人が減ってしまうと、ユニークな書き方をする人が減ってしまいます。
そうした悪循環に陥らないためには、複雑な世界のありようを、その豊かさを損なわずに、複雑なまま伝えること。そして、聞くことや読むことを多様化していくこと。それが、インターネットの「語る力」を回復させていくことにつながるんじゃないかと思っています。
語る力が回復することで、ウェルビーングの総量が増える?