思考の免疫
10の本能をどれだけ熟知したところで、人間の性質からそれを抹消することはできない。本書でも提示されているし、拙著の『「目標」の研究』でも示したが、ミュラー・リヤー錯視のことを知っていても、やっぱり線の長さが違って見えることは止められない。つまり、誤った思い/考えは、人間の脳から常に出てくる。それがデフォルトなのである。
だからこそ、問い直すのだ。問い直すことで、立て直すのである。
その意味で、これは免疫機構と言ってよいだろう。自問とは、思考の免疫なのである。
本書で紹介されるケアは、その免疫を強化するのに役立ってくれるはずだ。
哲学って武器になるというより、毒になる気はするな。 それで免疫がつくようなところはあるだろうけど。
「自分」と違うものには免疫反応がでる。「自分」が硬い人ほど、そうでないものを拒絶する。
自問という免疫が抑制されると、日に日に先鋭化していく 「肯定」というのは、脳のシステム2を沈黙させるというのが、最大のポイント。 自己批判のシステムを黙らせることであり、刹那的感情に白紙委任状を渡すことであり、精神の免疫系を抑制することでもある。
ただし、一時的にそれが必要な人もいる。
手術や終末医療でモルヒネを必要とする人がいるのと同じで。