ブックカタリストBC070用メモ
書誌情報
著:オリバー・バークマン
1975年リヴァプール出身
『ネガティブ思考こそ最高のスキル』河出書房新社 (2023/3/25)
原題
Help !How to become slightly happier and get a bit more done
翻訳:下隆全
出版社:河出書房新社
出版日:2023/4/26
2014年8月東邦出版『HELP!最強知的"お助け"本』の改題・復刊
どんな本か?→広大な自己啓発の世界を旅するときのロードマップ
「人の幸せ」にかかわるいろいろな問題を解決しよう、というコラム
自己啓発界の大御所たちのうさん臭い予言の数々に我慢できなくなった
「幸せ」についての二種類の議論
心理学者による「幸せの研究」
達成感・満足感の発生源を特定する
「ライフハック」
従来のように勇ましい預言や目標を掲げるのではなく、もっと穏やかで身近な目標を設定しようという自己啓発運動
著者のオタク趣味に合致していた
時間管理システム、やることリスト、自己管理手帳
ポピュラー心理学の世界への探求
自己啓発、幸せの研究、ライフハックなどなどの「実用的な心理学」
すべてがナンセンスというわけではない
積極的思考は問題もあるが
しかしながら、ポピュラー心理学全体が積極的思考に汚染されているか、というと、そうでもない。深い洞察力を持ち、実践可能で賢明かつ人間味にあふれる部分も多く残されている。問題はそれらの違いを知るための秘訣である。
もう一つ求められる秘訣は、いかにして実践するか
ただし、「幸せについて何か大きな原則」を発見した、というのではない。私が「できた」というのは、そんな大それたことではない。むしろ、数々のこまごまとした事柄であり、テクニックであり、ちょっとした洞察のたぐいだった。
大きな原則を発見したとすれば「変化」についての考え方
自己啓発について考え直す
私たちの人生に変化をもたらすもの
著者からの忠告
自らを助言者の元祖であるかのように振舞う人々には絶えず疑いの目を向けなさい、ということだ。
第1章 今すぐに改めるべきこと――大げさな決まり文句に惑わされるな
「情熱を持てる仕事」など探すだけ無駄だ
情報熱は自ら創り出すものであって、「見つける」ものではない
『やりがいのある仕事という幻想』森博嗣
森田正馬(もりたまさたけ)
できる限り最高に「不完全な人間」でありなさい
「いつもの自分」パラドックス
「自分」をどう捉えるか
固定的な認識と発展的な認識
人生の再出発問題
「今いるところからスタートせよ」
受け入れること
事態を受け入れることは、好んだり了解していることを意味するわけではない
ネガティブな気持ちとのつき合い方
メタ・ネガティブ
ゴール(目標)
人生の目標(ゴール)を達成する方法
「明確なゴールのない人生は濃い霧の中に済んでいるようなものだ」
by ブラインアン・トレーシー
読者の劣等感を衝き、解決策をちらつかせる
○日で人生が変わる
期限を設けるストレス
完璧主義的な評価
意志至上主義
死ぬまでにしたい○○
情報リストの問題
リストを読んだり作ったりしていると、それだけでやった気になる
『スタンフォードの自分を変える教室』(ケリー・マクゴニガル)
「情報リスト」は物事の根本的な改善を積極的に妨げようとする
by Merlin Mann(マーリン・マン)43 Folders
今すぐ手にすることのできる便利な情報によって、本当に必要とされる情報が不鮮明になる
選択肢が多すぎるため、ついついイージーゴーイングに走る傾向がある
第2章 心の扱い方を知る――幸福度を高める方法
感謝すること
「習慣は贅沢な喜びを退屈な日常茶飯事に変えてしまう」 オルダス・ハクスリー
感謝にはたしかに効用がある
心配について
満足感は淡泊だが、不安や心配はずっと刺激的
「独りで悩むな」by 心理学者エドワード・ハロウェル
利他について
寄付とドーパミン
不成功と不作為
不作為は無限の広がりを持つ
「一旦決めると元に戻せないような決定は、その結果がどうなったにせよ、あまり後悔しなくてもよい」by 心理学者ニール・ローズ
後悔を根こそぎ解消しようとはしなくていい
日記
自然の力
コントロール
われわれは、予想以上に積極的に強い力で物事をコントロールしていると信じる一方で、反対に自分たちには何も力もないと思い込んでしまう
前者はストレスの原因になるが、後者は学習性無力感(マーティン・セリグマン)
コントロール感の調律
発散か共有か
カタルシス仮説
釘打ちや愚痴
ストレス
生物学者ハンス・セリエ
「変化を求める外部からの刺激に対する不特定の体内反応」
ストレスは緊張に近いニュアンス
人生の感動
「楽しい気分」を誘導する試みは失敗する
幸福が生まれるための環境を整えることはできるが、強制はできない
第3章 良い友だち、良い人間関係――現代的社会生活の営み方
相手の真意
訊いてみるタイプの文化と探ってみるタイプの文化
自己中心性バイアス
相手の考えを実際以上に大げさに想像してしまう癖がある
第4章 職場と自身の環境改善――余計なストレスを排除する
どうでもいいことだけが議論される法則
自転車置き場の議論
あることに費やされる時間はその費用と重要性に反比例する
仕事と娯楽
娯楽には否定的なイメージ(非労働という位置づけ)
第5章 仕事をはかどらせる方法――生産性の向上
やることリスト
活用の三つのポイント
一つのリストを複数目的で利用しないこと
マスタータスクリスト(備忘録)、デイリータスクリスト(手順書)
「やることリスト」と「やりたいことリスト」
デイリーリスト自己完結型にすること
第6章 健康な精神生活を送るための智恵と工夫――もっと頭を使おう
判断について
理性と直感の両方を混ぜ合わせた意思決定の手法
問題の大小によって選択する
大きな決定は直感、小さな決定は、理性
言葉に表せない感情に焦点を当てる
最初は理性的に、途中から直感的に
締め切りを設定する
認知的安易性
安易で目に付くことや思いつくことがあれば、それが望ましくて重要な真実であるかのように思い込む
第7章 日々の疎ましい思いとの付き合い方――心の平穏のために
いらいらしないで毎日
気になることをリストアップして、一番厄介な問題をすぐに処理する
第8章 安易についていくな!――大物、超人、その他いかがわしい人物
助言
誰だって人々に助言することはできる。しかし、実践的法則に照らし助言することが大切で、そのためには、ディーパック・チョプラからスティーブン・コヴィーまでポピュラー心理学の人気作家がしているように、まず助言そのものをできるだけ大きく誇示してみせる必要がある。つまり、あなたの助言が包括的な解決策であることを示し、次に、その詳細を習得すれば誰でも間違いなく成功できることを保証してみせなければならない。一般的に良い助言と言われているようなものは簡素で、年季の入った陳腐なものである。
これに対して、金儲けになる実践的法則は複雑で意図的に新しいものでなければならず、それにはブランド設定が重要になってくる
第9章 不完全こそ最高の状態――まさかと思われる幸福への道
問題について
われわれは仕事でも、私生活でも、また政治においても、いつもさまざまな問題に直面し、それらを解決しようともがいているが、そもそも何が問題なのか、何を基準に問題を設定するのか、という基本に立ち戻って考える人はごく稀にしかいない。
「壊れていないものは修理するな」by ジミー・カーター元アメリカ大統領の上級アドバイザー バート・ランス
ゴールは気にしなくていい
われわれは、人生のいかなる面においても、最終結果をコントロールすることができない。われわれにできること(それ故に、責任を負わなければならないこと)は、今現在の人間関係や親としての役割などを大切にし、その他何であれ幸福を追求することに時間と労力を注ぐことだ。その結果、現実に何が起ころうと、それは深い意味において、もはやわれわれと関係のない出来事なのだ。