『闇の自己啓発』
https://m.media-amazon.com/images/I/41HUDeE+WcL.jpg https://www.amazon.co.jp/dp/B08T62ZR7M/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1
「自分を変えたい」のなら、人間を超越せよ――ダークウェブと中国、両極端な二つの社会が人間の作動原理を映し出し、AIや宇宙開発などの先端技術が〈外部〉への扉を開く。反出生主義を経由し、私たちはアンチソーシャルな「自己啓発」の地平に至る――。現代思想やインターネットの最深部を駆けめぐり、未知なる事物に出会うとき、私たちの世界観・人生観は一変する! 話題騒然のnote連載読書会「闇の自己啓発会」、ついに書籍化。補論「闇の自己啓発のために」(江永泉)収録。
目次
第1部 闇の社会
ダークウェブ―課題図書
木澤佐登志『ダークウェブ・アンダーグラウンド―社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』
中国―課題図書 梶谷懐/高口康太『幸福な監視国家・中国』
雑談1 『天気の子』と神新世
第2部 闇の科学
AI・VR―課題図書 海猫沢めろん『明日、機械がヒトになる―ルポ最新科学』
宇宙開発―課題図書 稲葉振一郎『銀河帝国は必要か?―ロボットと人類の未来』
雑談2 『ジョーカー』のダンス
第3部 闇の思想
反出生主義―課題図書 『現代思想』2019月11月号 特集「反出生主義を考える」
アンチソーシャル―課題図書 レオ・ベルサーニ/アダム・フィリップス『親密性』
雑談3 ゼロ年代から加速して―加速主義、百合、シンギュラリティ
補論 闇の自己啓発のために
著者四人による読書会の内容を書籍化したもの。
江永泉(えながいずみ)
木澤佐登志(きざわさとし)
『ダークウェブ・アンダーグラウンド 社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』
『暗黒の啓蒙書』(ニック・ランド)の序文
The Dark Enlightenment
ひでシス
役所暁(やくしょあかつき)
読書会の本
『人文的、あまりに人文的』
そんなビッグブラザーの支配する中で、自己を奪われないためには何をすればよいのか。私は読書会こそがその答えであると思う。ひとりで思考し、学び続けることが難しくても、ともに語り、学び、思考する共犯者がいることで、自己を失わずに、思考することが続けやすくなる。
私たちが、内的な自己に注意を向ける回数を減らし、巨大プラットフォームが私たちの行動ログを積み重ねていくならば、相対的にプラットフォームの方が「私について」知ることになるだろう。しかしそれは、相対的でしかないように思う。
第一章「ダークウェブ」。面白い指摘が二、三あり。日本文化のフォーラム性の欠如は、今のインターネットで如実に感じられる。それはそれとして、第一章の結びはなんともいえない暗い感じであった。
第二章「中国」。まずは冒頭部分。フォーラム性の欠如が教育環境の問題ではなく、普遍的な問題であるとすれば、熟議は成立せず、功利主義の達成は超AIに頼るしかなくなる。あるいは熟議を成立させられない人を、「スラム」に追いやるしかなくなる。
第二章最後まで。意識の欠落に「幸福」はないだろうし、意識の統一にもまた「幸福」はないだろう。いわやんや愛なんて。しかし、そんなものすら、生存に比べたら些細なものである、という視点ももちろんありうるわけで。
第三章「AI・VR」。めちゃ面白い。まず変性意識について。一つの可能性として脱意識・超AIとは別のルートがありうるとしたら変性意識を通過した熟議の再構築だろう。
あと、3Dプリンタのデータとイデア論。いったい消失したアウラはどこに行くのだろうか。