ブックカタリストBC051用のメモ
ウィーン大学教授(メディア・テクノロジー哲学)
『ユリイカ』『現代思想』
全体で150pほどの本。
目次
1. 現象
自己啓発の強制
2. 歴史
自己知や完全性を求めた古代の哲学者、聖職者、人文主義者
3. 社会
近代の自己執着 ルソーからヒップスター実存主義まで
4. 政治経済
ウィルネス資本主義の下での自己馴致と搾取
5. テクノロジー
カテゴリー化、測定、数値化、強化、もしくは、なぜAIは私たちについて私たち自身より知っているのか
6. 解決策(第一部)
関係性自己と社会変化
7. 解決策(第二部)
私たちについて異なった物語を語るテクノロジー
自己啓発とは何か?
自己啓発の印象
原題『Self-Improvement』
Self-Enlightenment
文化的な病としての自己啓発
常なる自己改善の要請
「よりよい自分になる」(あるいはwith 完璧主義)
「いまを生きる」just for today/Living for Today との対比 ソーシャルメディアとセレブ文化
「私はこんな努力して、成功を手にした。あなたもできる」→「あなたが変えようとしない限り、あなたはかわらない」
選択肢の一つではなく、義務としての自己啓発
テクノロジーと自己啓発の関係
テクノロジーは単に目標達成のための道具や手段としてではなく、目標それ自体を作っている。
その自己啓発で、誰が儲かるのか?
カルチャーと搾取
解決策としてのデジタル・デトックスすらも自己啓発の一つ
歴史
「汝自身を知れ」
デルフォイのアポロン神殿に刻まれていた言葉。
自分を知る→自分の無知を知る(まだまだ知るべきことがあると知る)
良き生を生きる(自分の中に不死の魂が既に知っていることを思い起こし、正義と愛の本質を理解しようとすること)
自分の魂をケアし、自省しなければならない。
ストア派の教え
外部に執着するよりも、内部に視線を向ける
自分の欲望をコントロールし、外部に左右されないようにする。自分がコントロールできないことについては望むべきではないが、自分については形成できる。
「自己を知る」から「自己をつくる」へ
ニーチェやサルトルの方向性
「良き生」ではなく「独自のリアリティや自己を構築すること」が求められる
自己実現・自己創造
自己の完全化は、キリスト教にも含まれている(アウグスティヌス)
その後失われ、むしろ「自己否定」へと向かう
ヘレニズム思想は形は違えど、自己改善や外部世界からの自立に焦点をあてていた
犬儒学派(キニックス)
快楽主義者(エピキュリアン)
東洋・仏教は?
一部利用されている
セルフケアや自己啓発といった古代からの思想および実践は、もはや対抗文化ではなく、むしろ主流の文化になっている。
現代のセルフケアや自己啓発の実践は「世界からの退却」でもなく「別世界の生活」も目指していない
近代資本主義の生成を助けただけでなく、「自己の企業」(ユニークで自律的な自己を作る)も手助けしている。
しかし、その自律性は幻想ではないか?
本というメディアと人文主義者
デジタル人文主義→個人主義および自分を独自の存在と見なす脅迫の増加
ルソーの『エミール』
自己愛と利己愛
社会
自己中心性がもたらす弊害と、社会的な構造
スピリチュアル・ナルシズム
実存主義すらも取り込む資本主義
政治経済
資本主義は人を阻害し、搾取する
余暇時間にすらそれが及んでいく
すべてがデータ化されていく
そうしたデータからわかる「自己」とは何か→そのデータから形成される自己知
問題を解決しなければならないのは誰か?
テクノ解決主義
テクノロジー
解決策第一部
自己の中にある他者
現実の他人を無視できない
ナラティブ・アイデンティティ(物語としての自己)
「私たちは実体ではない」という点で実存主義者は正しい。が、がしかし。
完全なコントロールを持つ自律性まではない
自分の物語を後から解釈する自由は持つ
二つの近代的自己
自律的な自己と操作される自己
断片化された個人→分人