内なる囁き
『内なる囁き』(原題:The Whisperings Within)著者:デヴィッド・バラシュ(David P. Barash)『内なる囁き』は、動物行動学者であり心理学者でもあるデヴィッド・バラシュが、**人間の心の中にひそむ「進化の声」をテーマに書いた本。生物学、とくに社会生物学(sociobiology)や進化心理学(evolutionary psychology)**の視点から、人間の行動や感情、倫理観を解き明かそうと試みている。 主なポイント
人間の愛情、攻撃性、利他行動、道徳心などは、すべて進化の過程で形成された「適応的な戦略」である
「内なる囁き」とは、進化の歴史の中で人間の心に刻まれた無意識のプログラムのようなものを指す
個人の意志や文化によって変わる側面もあるが、その土台には生物学的な傾向が強く存在すると論じる
「生得的なもの vs. 学習されたもの」という二分法を超え、両者の複雑な交差に焦点を当てている
背景
バラシュは、E.O.ウィルソンの社会生物学に影響を受けつつも、より柔軟で批判的な立場を取っており、生物学的決定論には慎重なスタンス
人間の自由意志や倫理的選択の余地を完全には否定しない