1-3.発明把握のばらつきの原因
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発明把握の出力結果にばらつきが出ることの意味は、人によって、発明の把握の仕方が違い、その結果得られる権利の内容も異なってしまい、その質にばらつきがでることを意味する。ここでは、本来、質のばらつきをなくし、最適な権利を取得できるように、発明の把握も最適でありたい。
そこで、発明把握の出力結果にばらつきが起きる原因を探りたい。その原因としては、以下のようなことが言える。
(1)記載ルールを十分理解していない場合である。見よう見まねで特許明細書を書いている人に、この傾向が多い。次に、
(2)発明理解のための技術的知識やその他一般的知識が足りず、発明情報を十分に理解できない場合である。これは、aの問題である。さらに、
(3)分析力や論理的思考力が足らずに発明の本質を捉えることができない場合である。また、発明の把握はできたとしても、
(4)十分な表現技術を有していないが故に、発明を正確に表現できない場合である。
(5)b(ずれ)の問題もある。bがゼロであれば、原点を外さずに発明を捉えることができるが、時に、屈折して理解し、発明の本質をずれて把握してしまう場合がある。すなわち、色眼鏡で物を見るという場合である。このbがゼロでない人は、発明を別のものとして把握してしまう結果となる。これでは、本来の発明が保護されないこととなる。このbに意識的に数値を入れ、意図的に発明をシフトさせ、別発明を構成することもありうるので、一概にbの存在が悪いとはいえないが、無意識に発明の本質をずらしてしまう人は、このbにつき注意を要する。
本講座では、特許法に定める記載ルールを中心に、特許請求の範囲のあるべき姿を論じるが、それだけを理解するだけでは上記したように不十分であり、各人、発明を理解し特定するための知識、物の見方や分析手法、発明表現技法のうち、自身がどのレベルでの知識、能力が足りないのかを知り、それを補完していく努力が常に必要であることを忘れてはならない。
これから明細書を書こうとする者は、自身の持つ個性を良くよく理解し、aやbとしてどのような固有値を有するかに注意し、常に確実で安定した発明把握スキルを発揮できるよう心がけたいものである。