未来の幅
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1: 未来のことが全然わからない
3: 悪い未来を避けよう、良い未来にしよう、と考える
アクションのアイデアが生まれる
途中の原稿nishio.icon
熟議のためには前提知識の共有が必要である。しかし、人は知りたいと思っていないことを学ぶことができない。そこで熟議のためにはまず、人々の「知りたいという気持ち」を掻き立てることが必要である。
この手段として我々はSFプロトタイピングに注目している。プロダクトデザインにおいて粘土やレゴブロックでプロトタイプを作るのと同じように、未来のデザインにおいて文章を用いてSFを作る手法だ。
今回我々はSFプロトタイピングのプロセスをLLMによって支援する仕組みづくりを考えている。
具体的には世界観ごとに数ツイート程度の文章である。
中庸な一つのストーリーではなく、複数のストーリーによって「未来の幅」を示すことが重要である。
ストーリーを読み、登場人物の体験を共有することで、人々は未来像を自分ごととして考えるための足場を手に入れる。
このSFプロトタイピングのプロセスをLLMの支援によって軽く何度も行えるものにすることが重要である。これらのストーリーはアジャイル的にサイクルを回して改善して行く。ストーリーはLean StartupにおけるMinimum Viable Productに相当する。人々に対してリリースし、人々の反応を得ることができる最小限のプロダクトだ。
例えば、専門家に「熟議のために人々が知るべきファクトをリストアップしてくれ」と頼んでも、その出てきたものを興味関心のない人々は学ぶことが難しい。そうではなくプロトタイプとしてのストーリーができてから、専門家がファクトに反するところを指摘して、それを受けて改善する。
このイテレーションを何度かやって専門家による監修済みのストーリーがいくつもできたら、次はそのストーリーに対する大勢の非専門家の感情を収集する。例えばこのような質問だ: ストーリーで描かれた未来は好ましいか?この未来において、あなたはどのような利益不利益があるか?描かれた未来に至るor避けるためにはどうすればいいか?
ストーリーが主人公にとってハッピーエンドでも、人はそれぞれ違った視点で自分を投影する。例えばデジタル技術を使いこなす人が大成功するストーリーを読んで、取り残される自分を想像してアンハッピーになる人がいるだろう。
大勢の人々の多様な視点からの感情を集めることで「より多くの人がハッピーになる未来」が明確になっていく。その未来に至るためにはどうすれば良いかの生産的な議論が行えるようになる。
こうして良い未来に至るためのアイデアが作られる。アイデアは仮説である。ストーリー同様に専門家の実現可能性チェックの対象になる。また、そのアイデアを採用した場合にどうなるかのストーリーを作成し、大勢の人々によって感情的に受け入れられるかの検証が行われる。