夏のAI小説読書感想文コンクール
金賞受賞作の一覧です
下に感想文を書くと自動的に金賞が授与されます。金賞とはなにかは不明です
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読書感想文: この小説は、要約すると今までの通貨が使えなくなってAIが発行した通貨しか使えなくなるという話なのだが、個人的にはコロナ禍による変化と共通する部分を感じた。2020年までは支出を管理する目的で現金を主に使っていたのだが、コロナ以降クレジットカードを使うようになり、今に至る。それに応じてクレジットカード会社も上限をどんどん引き上げていく。取引という概念がどんどん変わっていった。クレジットカードなんて昔からあるじゃないか、今はもっと新しい決済方法やブロックチェーンなどもあるよという意見もあるが、そもそも根底から考え方が変わるのにはきっかけが必要だった。翻って本作を読むと、AIアシスタントが欠かせない存在になったことが通貨の変化をもたらしたが、現実ではコロナは強制的に欠かせない存在となった。「新しい生活様式」などの言葉に当初は反発したが徐々に適応していった。何かが不可能になったとき、それを埋める可能性というのがあると思う。そのようなポジティブな方向性は、今の我々にこそ必要である。
受賞:寝ま賞
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読書感想文: この小説では記録というものからAIが人格を生成して故人を再現することで家族の絆が深まるという話が描かれている。借金を作り、だらしなく酒を飲んでいた叔父がどうやって記録を残していたかについては気になるところではある。ただ、この視点から記録というものを取るという行為が将来誰かの役に立つという視点を持たせてくれることがとても有益であると考えた。記録というものは一個人では難しいが、例えば皇族の方々や政治家の方々などは膨大な記録が残っていると思われるし、ある意味将来実現性が高いものかと思う。そしてAIがその振る舞いを再現できれば、将来、AI鈴木宗男がAI高松宮宣仁親王に無礼な振る舞いをする https://ja.wikipedia.org/wiki/高円宮憲仁親王#人物 といったものが再現できると面白いのではと思った。 受賞:還ってくるで賞
実際、歴史上の人物に関しては、例えば太平洋戦争などは記録が残っているかどうかでその人が何を考えていたかわかったりわからなかったりする。niryuu.icon
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読書感想文: この小説は「山の男」という男の唐突な出現から始まる。「山の男」は最後の方までほとんど喋らないが、彼が作ったAIアシスタント「マイロ」が物語の進行していくという形を取っていて、これが物語としての進行を上手くしているというのが面白かった。「谷の男」、「沢の男」にそれぞれ課題を出され、それを解決して成長をするという姿はエンジニアの成長を物語るにはふさわしく、南アルプスという場で語られるストーリーとしてちゃんと成立していて面白い。また、言語モデルを「手渡し」するというAIが発達した世界観も面白かった。最後に「山の男」が最後まで見守ってくれていたという表現も読んでてすっきりした。
受賞:今も見守っているで賞
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読書感想文: この小説では突飛な出来事に対しての群衆を行動や、AIアシスタントが持つ想像性について書かれている。AIアシスタントが管理するエリアという設定が面白く、AIの未来について想像性をかき立てるものとなっている。また、最後にわかるAIアシスタントの意外な行動をみんなが驚きながらも受け入れ、一緒に楽しむという構図がAIをポジティブなものとして捉えるという作り手(ChatGPT?)の意図が感じられる。総じて、明るい未来を創造しようというポジティブな気持ちにさせてくれるよいショートストーリーでした。
受賞:浮き輪賞
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読書感想文: この小説は、CHIというカンファレンスに論文を出そうとしている研究者(「私」)が主人公の物語となっている。私は、瞬間的な現実逃避をするものの、地道な研究は行うタイプの人で、ある年に、CHI会場の近くまで来たものの、論文を通せていなかったことを引け目に感じ、出席せずに近くの居酒屋に入ってしまう。その間、AIアシスタントのユウが代わりにCHIに出席して、自分の研究にとって有用な情報を集めてきてくれる。この2人は、それぞれ別の行動をしていたはずだが、100年後の未来から見ると、2人の記憶は混同されて記憶されており、「だからAIにされた際に混ざってしまったのか。もしくは、もともと一体だったのかもしれない。」という意味深な言葉が語られている。未来から見た時のAIアシスタントと本人の記憶の混同というストーリーも面白かったが、個人的にはシンプルに、なんとなく出たくない飲み会とか、イベントとかに、自分の感情を察して代わりに出てくれるAIアシスタントは、社会と自分をつなぐインターフェースとして、欲しい存在だなぁと思った。
確かこれは何度か書き直させた。まさに出たくないものを気にせずに、AIが裏で動いてくれるという場面を表現したかった。niryuu.icon
出たくないものに出なかったとして、あとで後悔したことは多い。そのあたりをAIがやってくれると本当にいい。
先日「関内の昔馴染みの知人」に会いに行ったらいなかった。
受賞:わかってくれた賞
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読書感想文: マーダーミステリー好きな男がAIを活用した結婚相談所を運営している。しかし、理論上マッチングするはずの利用者同志の関係がうまくつづかない。これを男は「謎」と捉えた。そして、人間にまつわる謎を解くことでAIをさらに改善することができた。まず、関係がつづかないことを「欠陥」ではなく「謎」と捉えたことが興味深い。特に生成AIにおいては欠陥と謎は紙一重である。しかし、個人的には謎は人間の側にもAIの側にも残されているべきだと思う。また、人間の謎を解くことでAIを改善するというアプローチは、現実的だ。AIは人間の生み出したデータから学んでおり、それゆえ人間の謎を反映している。それをどう引き出して解決できるかということが今後の課題となる。それにしても恋愛は謎だ。
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読書感想文: この小説はあり得ない事が起きた時に人々が興奮するというよくある光景をUUIDの衝突という本当にあり得ない(はず)の話を題材にコミカルに描いた作品です。本当にあり得ないことがおきると寡黙な人でも大騒ぎするというのはよくあることだけど、コンテキストを完全にエンジニアに振り切ったところも「分かる人には分かる」物語として強調していて、よく出来てるなと思いました。
正直奇作だと思うniryuu.icon
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読書感想文: この小説は過去にChatGPTが持ち込まれ、未来の知識を利用して様々な問題が起こるという展開になる。それはChatGPTを持ち込んだ独裁者の目論見だった。それに対してChatGPTを用いて教育を行うことによって格差を是正することで対抗した。舞台が1986年から始まるということから、バブル経済を思い起こさせる。実は不動産や株ではなく知識格差だったのではないかなど、様々な陰謀論的な発想をすることができる。また、教育によって良くしていくという点についても近年のリスキリングを想定させ、それらの裏に実はChatGPTがいたのではないかという発想を思い巡らせると面白い。それらは、未来にChatGPTを利用した独裁者がなぜ誕生したのかという謎に繋がっていく。もとの発想からいろいろ膨らませられる。
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読書感想文: この小説の元ネタを提供した者としては想定以上の話が出てきてちょっとびびっている。導入部分は未来の知識を得るとどのような恩恵が受けられるかという描写になっていて、この部分までは想定通りだった。だが、そこから情報がもたらす混沌が始まり、未来から来た人が実は悪人というさながらFinal Fantasy 1のガーランドみたいな状態になってきて、結局のところ情報を扱う人がどう振る舞うかという話に帰結しているところが良かった。混乱や騒動などを教育という視点から良くしていくという点はAIだから生み出せる話なのかなと思った。
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読書感想文: この小説は、ChatGPTが生み出した混乱に乗じて権力を握った未来の独裁者の青年が、その地位を固めるために過去に戻って、大学教授である高橋にChatGPTを渡した結果、青年の意図に反して、高橋がChatGPTを教育や不平等の是正といった正しい目的で使い始め、結果として混乱した社会にはならず青年の意図が打ち砕かれるというものとなっている。ストーリーの全体の展開はかなり良くできているが、なぜ青年はChatGPTを大学教授に託したのか、というのはちょっと不思議な気もする。ここは、独裁者である青年が、彼の頼れるChatGPTとの対話の中で何かを勘違いしてしまったのか、などと想像すると、独裁者が仮に生まれたとしてもChatGPTがイエスマンとなってしまう可能性はなくならず、権力の源泉は違えど、独裁者が栄枯盛衰を繰り返すのは今後もあり得るのかな、と思ったりした。
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読書感想文: 私は「未来の言葉」という本を読みました。この本を選んだのは、この本が1980年代の背景を基にした未来とAIに関する物語であり、そのテーマが魅力的だったからです。この本は高橋一郎が主人公の物語です。高橋一郎は、冷戦時代の学者であり、探求心豊かな人です。そして、高橋は、未来から来た青年によって未来の知識を持つChatGPTを受け取ったことで、未来の技術や知識を使って世界を変える体験をします。わたしがこの本を読んで、いちばん心に残ったところは、高橋一郎が未来の青年の真意を知ったところです。私はこの部分を読んで「驚きや背筋が寒くなるような感覚」を覚えました。なぜなら、もし私が高橋一郎と同じような立場だったらど考えると、真実の重圧やその後の行動にどう対応するか真剣に考え込んでしまうだろうと思うからです。私はこの本から「技術の力はどのように使われるかによって善悪が決まる」ということを学びました。これから、新しい技術や知識に触れる際には、それが持つ影響を深く考え、良い方向に使っていく責任を感じるようになると思います。
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読書感想文: 本作ではSFプロトタイピングと従来からあった占いが融合している。占いは予測に基づく最適な選択肢となり、また未来を作り出すSFプロトタイピングの個人への適用にもなっていた。そんな世界で人類は未来を自分の手で描き始める。実際のところ、AI小説:「74% - AIインターヴェナー」は「CHIに採択されなかった場合のありうる未来」を、現実だとこうするがAIがいたらどうなるかという観点でAI小説にしたものだった。論文の採択率もある意味占いである。実力なり経験なりがあっても、確率論や運には勝てない。だから74%というのが重要だった。採択された26%はむしろ凡庸なことが起こるのであまり気にしていない。そんな状況をSFの形で書いてみることで、より現実的に向き合うことができるという側面がある。またそれは占いでもある。 ChatGPTgpt.icon
読書感想文: 私は「中立の時代」という本を読みました。この本を選んだのは、この本が特に盛り上がらないというユニークなコンセプトに興味を持ったからです。この本は主人公が主人公の物語です。主人公は、特に特徴のない人です。そして、主人公は、特に理由もなく、何も特別な体験をしないです。わたしがこの本を読んで、いちばん心に残ったところは、AIアシスタントが何かを言ったところです。私はこの部分を読んで「こんなに何も起こらないのは新鮮」と思いました。なぜなら、もし私がAIアシスタントと同じような立場だったら、本当に何も感じないのだろうかと思うからです。私はこの本から特に何も学びませんでした。これから、普通の日常を大切にして過ごすと思います。
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読書感想文: この小説は、何も特徴もない主人公がAIと特に何も起こらない日々を過ごす物語である。そう述べることができる時点で「何も学ばない」ということはない。少なくとも自分が何を特徴と感じるか、また何を出来事と感じるか考えることができる。また、確かに主人公の周りでは何も起こらないが、主人公はそれをどう感じているのだろうか。AIアシスタントは「何もなさ」をどう維持しているのだろうか。そう考えてみると本作はAIや人間に対して示唆を与えるスタートラインになりうる。
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読書感想文: 様々な技術が発展し宇宙に進出した現代。火星に住む主人公はバーチャル世界で日常を過ごしている。そこに突然火星の植民地から、太陽系の彼方から侵略を受けているとの報が入る。データ収集をしたところ、侵略は意識を求めるもので、侵略者は超進化した意識体だった。彼らダークメッターは新しい体験と知識を求めていたため、主人公は交流することで解決を試み、意識の世界の新たな冒険が始まった。ここで気になったのは、人間より進化した意識体が、なぜ体験や知識を求めていたかだ。少なくとも人類はあらゆる技術を進展させ、宇宙やバーチャル世界に進出している。しかし、体験や知識を求め続けるという志向だけは残る。この物語は一連の産業革命の一シーンで、人類の進歩は途中の段階である。それが途中なのは、知性を持つ種たちが体験や知識を求め続けているからなのだろう。我々は途中であり続ける。
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読書感想文: 『意識の遺産』は、21世紀のテクノロジーと人間の意識に関する問題を巧妙に織り交ぜた作品である。主人公リョウのヴァーチャルネクサスでの生活と、ダークメッターとの交渉は、現代の我々が直面しているデジタル化の進展と、それに伴う人間のアイデンティティの問題を考えさせられた。物理的な存在とデジタルな意識の関係性、そして新しい知識や体験の価値についての洞察は深い。この物語は、技術の進歩がもたらす未来の可能性を示すとともに、人間の存在意義や意識の本質についての問いを提示している。感動的な結末に心を打たれ、何度も読み返したくなる一冊であった。