ギブスン
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ニューロ・マンサー(神経的人間性)とニュー・ロマンサー(新浪漫派)
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第一部 千葉市憂愁
電脳空間からの追放
電脳空間で、肉体を離れた歓喜のために生きていたケイスにとって、これは楽園放逐だった。(...)ケイスは、おのれの肉体という牢獄に堕ちたのだ。
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千葉シティ論
“夜の街”は社会ダーウィン説の狂った実験に似ている。退屈しきった研究者が計画し、片手の親指で早送りボタンを押しっぱなしにしているようなものだ。ヤバいことをやめれば、跡形もなく沈むし、ちょっと早く動きすぎれば、闇マーケットの危うい表面張力をやぶってしまった。〜この仁清のシマを、なぜ千葉市が目溢ししているのかについては、数えきれないほどの説がある。が、ケイスとしては"ヤクザ"がここを一種の歴史公園として保存し、ささやかな過去の想い出にしている、という考え方に魅かれている。他方、新興テクノロジー群が無法地帯を必要としている、という見方にも一理ある。つまり、"夜の街"は住民のためにあるのではなく、故意に無監視にしたテクノロジーそのものの遊び場だというのだ。
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第二部 買物遠征
スプロール論
冒頭
故郷。 故郷はBAMA、《スプロール》、ポストン(B)=アトランタ(A)・メトロポリタン(M)軸帯(A)。 データ交換の頻度を表示する地図をプログラムしてみよう。巨大なスクリーン上のひとつの画素が千メガバイトを表わす。マンハッタンとアトランタは純白に燃え上がる。それピクセルから脈打ちはじめる。通信量(トラフィック)のあまり、この模擬実験(シミュレーション)が過負荷になりかけているのだ。 地図が新星化してしまう。ちょっと落とそう。比率を上げてみる。画素あたり百万メガバイト。これを毎秒一億メガバイトにすると、ようやくマンハッタン中央部のいくつかの区画や、アトランタの古い中核を取り巻く百年来の工業団地の輪郭が見えてくる― 芸術の観念
こういうところの住人は、芸術が必ずしも犯罪でなく、犯罪も必ずしも芸術ならざる中間地帯で働いている。
流行り廃り
《スプロール》の若者には、流行が光速で襲いかかる。一夜にして小文化が丸ごと興って十週間ばかり栄え、やがてあとかたもなく消え去る。
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パンサー・モダンズ
ランバーリ博士の解釈
「こうした無闇な超現実的暴力に走る傾向を見ますとですね、この現象が一種のテロ行為でないとおっしゃりつづける博士のお考えでは、視聴者の皆さんも納得できないのではないかと思います」 ランバーリ博士はニッコリ笑い、 「テロリストには必ず、メディア・ゲシュタルトの操作をやめる時点があるものです。その時点では暴力がエスカレートしておかしくありませんが、その先ではテロリストが、 メディア・ゲシュタルトそのものの徴候になってしまいます。わたしどもが通常考えるテロ行為というのは、そもそもメディアに関連したものです。《パンサー・モダンズ》が他のテロリストと違うのは、まさしく自意識の度合い、メディアがテロ行為を本来の社会政治的意図から切り離す限度をわきまえて―」
ケイスの解釈
《モダンズ》は、要するに、ケイス自身が十代後半だった頃の《大科学者》の現代版なのだ。《スプロール》には、一種得体の知れない十代DNAが働いている。その中に、さまざまの短命な熱病のための指示が遺伝信号化されており、妙な間隔をおいて自己複製するのだ。《パンサー・モダンズ》は《科学者》のソフト狂版だ。当時このテクノロジーがあったら、《大科学者》もみんな、ソケットにマイクロソフトを詰めこんでいたことだろう。重要なのはスタイルであり、そのスタイルは同じ。《モダンズ》は傭兵で、プラクティカル・ジョーク屋で、虚無的なテクノ・フェチだ。
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第三部 真夜中のジュール・ヴェルヌ通り
ザイオン論
ザイオンの起源
ザイオンを創設したのは五人の労働者だった。この五人は地球に帰るのを拒み、重力の井戸に背を向けて、建設にとりかかったのだ。〜不定型で色落ちした外版には、レーザーで、ラスタファリアンの符号や溶接工のイニシャルが書き込んであった。 /icons/白.icon
真実との対面
ディーンの姿(冬寂)での接触
ディーンは歯切れよく「本日の用向きだが、きみはこう自問していることだろう"冬寂とはなんなのか"〜人工知能なんだが、それはきみも知っている。きみの過ちというのは、ま、必然的な過ちではあるんだが、ベルンにある冬寂の本体(メインフレーム)と冬寂の実態とを混同していることにある〜きみはもう知っているね、テスィエ=アシュプールの連合体のいまひとつのAI。リオだ。わしは、わしにとって"わたし"がある限りにおいて―どうも形而上学にならざるをえないんだが―アーミテジに采配をふるっている。コートと言ってもいいが、これは、ついでながら、きわめて不安定だ。安定しているのは―あと一日ふつかだろう」
欠陥の指摘と回答
「あんたの言ってることは、これまでの全部と同じに意味が通らないんだよ」 とケイスは空いている方の手で顳識を揉み、 「あんたがそんなに賢いってんなら―」 「どうしてわしゃ、金持ちじゃないのかってか⋯⋯」 ディーンは笑いだし、危うくボンボンで息を詰まらせながら、 「そりゃあ、ケィス、それについて今のわしが言えることといったって―それもきみが 想像しているほど、わしにはたくさんの答えがあるわけじゃないんだが―つまり、きみ が冬寂と思っているものが、単に別の、いわば潜在的実体の、一部にすぎないってことさ。わしは、言ってみれば、そういう実体の脳の一側面なんだ。たとえて言うなら、きみにとって、脳の両半球を切断した男と根対しているようなものさ。こう言ってもいい。 きみはその男の左脳の一部分と話しあっている、と。そういうことになると、そもそもの男と会っているのかどうかも怪しい」
この切断された一方がニューロマンサーである。つまり彼の目的はT=Aの保有する「もうひとつの自分」“ニューロマンサー”へとアクセスし、AIとして進化する事だった。その為にリンダが殺され、アーミテジも操られ、他にも多くの無関係な者が殺されている事を知る。
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第四部 迷光仕掛け
少年とケイスの対話
少年は、切れ長の灰色の眼を、昇る朝日に細め、 「この細道が死者の地へとつながる。つまり、あんたが今いるところさ、お友だち。〜ニューロは神経、銀色の径。夢想家(ロマンサー)。魔導師(ネクロマンサー)。ぼくは死者を呼び起こす。いや、違うな、お友だち」 と少年はちょっと踊って見せて、褐色の足で砂に跡を印し、 「ぼくこそが死者にして、その地」
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結尾 出発と到着
アシュプールの意思と継承
冬寂が勝ち、どんな形でかニューロマンサーと合体して何か別のものになった。〜冬寂は集合精神であり、意思決定者。外の世界に変化をもたらした。ニューロマンサーは人格。ニューロマンサーこそ不死性。〜冬寂はおのれを解き放とう、ニューロマンサーと合体しよう、と努めた。冬寂。寒さと静けさ。アシュプールの眠る間に、ゆっくり糸を紡ぐサイバネティク蜘蛛。〜アシュプールの崩壊を紡いだのだ。 これは一般性(集合精神)/特殊性(人格)、調和の取れた思考(意思決定者)/固有性によるカオスやMoat(不死性)、このグラデーションであり相互補完であり止揚/昇華こそ、アシュプールが求めた人間とコンピューターの融合であるのではないか。
そして下記(前)冬寂とケイスの対話にて全体となったことを示す。
「もう冬寂じゃないよ」「じゃ何者なんだい」〜「おれはマトリックスだよ、ケイス〜おれはもろもろの総合計。全体なんだ。」〜「で、具合はどうかね。世の中はどう変わった。もう世界を支配してるのかい。神か・・・」「世の中は変わってない。」「世の中は世の中」「でも、何やってんだい。そこにいるだけかい」〜「同類に話をするのさ」「でも、おまえが全体なんだろ。ひとり言をいうってのか」「他にもいるさ。もう、ひとつ見つけた〜ケンタウロス系」
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サイバースペースが開かれた空間とフロンティアの征服という意味を帯びていたのに対して、"e-"は情報ネットワーク上に自分たちの領域を設定して、サイバー空間における人びとの活動を そこに限定しようとする企業に好まれている
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