キューブリック
1968『2001年宇宙の旅』
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現代SFの聖書的位置づけ
猿と人間を繋ぐミッシング・リンクたるアウストラロピテクスから、「人類の夜明け」の章は始まる。
キラーエイプ仮説は1950年代にレイモンド・ダートによって提唱され、ロバート・アードリー(Robert Ardrey)の『アフリカ創世記』African Genesis(1961年)で、その理論はより広く啓蒙され、拡張される。
空を舞う骨の棍棒は、400万年の月日を経て核弾頭ミサイルを乗せる人工衛星となり、人類が住まう地球を周る。
すなわち美しくその悲劇を覆う《青く美しきドナウ》は、残酷さに起源を有する人類を象徴する対位法であり、その行く末を予言するラッパを意味する。
HALを殺した人類はつぎのステージへと誘われる。
本作の終幕でボーマン船長が赤ちゃんになるのは『ツァラトゥストラかく語りき』に起因する。ニーチェは精神が駱駝となり、駱駝が獅子となり、獅子が赤ん坊となるとする。そしてその極、超人へと達する。身体性からの解脱、すなわちヌースフィアへと至り、我々は神となるのだ。