アルネ・ネス
① 環境のなかに個々の独立した人間が存在しているというような原子論的な見方ではなく、世界というものを、網の目のごとく、相互に連関した個々の要素の連続体として関係論的に、また全体論的にとらえようとする。
② 人間中心主義ではなく、生命圏平等主義(biospherical egalitarianism)の立場をとる。
③ 生命の多様性(diversity)と共生(symbiosis)をもとめる。
④ 平等主義という原則から反階級制度の姿勢(anti-class posture)を貫く。南北間の経済格差の問題をも含めた人間社会における一切の差別や抑圧に反対する。(この点では、ソーシャル・エコロジーとも共闘できる。) ⑥ 混乱(complication)とは区別された意味での複雑性(complexity)を重要視する。これは人間社会における断片化され単純化された労働よりも、人間が全人格を傾けて能動的に協同できるような分業を支持することにつながる。
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1. 地球上における人間と他の生命の幸福と繁栄は、それ自体の価値(本質的な価値、固有の価値)をもっている。そして、これらの価値は、人間以外の世界が人間の目的にとって有している有用性とは無関係である。
2. 生命の豊かさと多様性はこれらの価値の実現に寄与するし、またそれはそれ自身で価値を有している。
3. 人間は不可欠の必要を充足するため以外に、この生命の豊かさや多様性を損なう権利をもっていない。
4. 人間生命と文化の繁栄と、人口の大幅な減少とは矛盾しない。人間以外の生命が繁栄するためには、人間の数が大幅に減少することが必要である。
5. 今日における自然界に対する人間の干渉は行き過ぎており、しかもその状況は急速に悪化している。
6. それだから、経済的、技術的、イデオロギー的な基本構造に影響をおよぼすような政策の変更がなされなければならない。このような変更の結果もたらされる状況は今日とは非常に違ったものになるであろう。
7. イデオロギー的変革は、生活水準の不断の向上への執着を捨て、生活の質を評価すること(固有の価値のなかで生きること)がその主たる内容である。「大きいこと」と「偉大であること」の違いが深い次元で自覚されるであろう。
8. 以上の項目に同意する人は、必要な変革を実現するため、直接、間接に努力する義務を負う。
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self→Selfへ
私たちと他の存在者との連帯について私たちがもっと理解するにつれ、一体化は進み、私たちはもっと配慮するようになる。これにより、他の存在の幸福を喜び、彼らに危害がふりかかった場合に悲しむようになる道が開かれる。私たちは私たち自身にとって最善であるものを求める。しかし自己の拡張を通じて、私自身にとっての最善がまた他の存在にとっての最善にもなっている。〈自分自身のものである―自分自身のものではない〉の区別は、文法上残るだけで、感情の面ではなくなる。
このように、アルネ・ネスは、自我(ego)・自己(self)・自己(Self:深遠にして包括的なエコロジー的自己)と自己了解が拡大し、その自然と一体である自己の了解は、おのずからあらゆる存在の自己実現を喜ぶ生き方を実現していくという。