高田怜奈「漂流 -東京に浮かぶゴミの埋立地における漂流のための植物園、記憶を辿るワイナリー-」
https://gyazo.com/ddface67aa156f8e57a42dfa7eb71c14
現代社会は大衆操作や消費主義に溢れている。さらにメディアの発達による生活の商品化、監視・管理が加速している。また、人間の感性は多元的でありきわめて複雑である。今私たちが操っているメディアたちは果たしてその複雑で入り組む感性に寄り添えているだろうか。そして駆使し操っているはずのメディアたちは私たちの主体的な選択を尊重してくれているだろうか。東京の街はどこに視線を向けても広告が視界に入る。一見煌びやかで楽しい遊び場である東京は特に大衆操作・消費主義に飲み込まれているのだ。それに気づかずに流され続ける群衆は主体性を失い、極めて受動的になっている。これを最も如実に示しているのは、東京の埋立地である夢の島である。夢の島はかつて”ゴミの島”であった。ゴミの最終処理場とされ、東京のゴミが集められた。多量の廃棄物を吐き出しながら増殖・発展していく東京は無機質で、人々の生活もショーウィンドウの中に収められているように生命力を失っている。パッキングされた綺麗ごとだらけの東京だけでなく、そこから溢れ出る廃棄物に目を向けることが自分自身を見つめることであり、主体性を取り戻すきっかけになるだろう。
・コンセプト&プログラム
https://gyazo.com/8e38e9333a014e5552621d495271adbc
・断面図
https://gyazo.com/eb3842efd7b18a3ca50a3bb57a886802
・平面図
https://gyazo.com/b67d56eadd1984ebea8fa36e9121437f
https://gyazo.com/def490149da43c00ca067da4ecd64d55
・ドローイング
https://gyazo.com/c56547b31a14f6a6963c218a1c5b57f2
https://gyazo.com/aaff2b1a939101c1bea0542082342583
https://gyazo.com/e34271a985261608f9621bec1d52b6b5
講評:若い世代のなかに、現代都市への不信感が広がっているように見える。どこか白々しく、わたしたちの行動を型どおりに抑制し、居場所を奪い取っていくような都市。ギー・ドゥボールは『スペクタルの社会』のなかでかつて、メディア化した近代社会がわたしたちを受動的な生き方に追い込み、疎外していく事態を告発した。高田さんのプロジェクトは、1960年代のシチュアシオニストたちの思想を参照し、その映し鏡として現代の都市を批判する。湾岸の埋め立て地に設けられたこの施設は、都市から離反し、精神的な漂流を重ねる若者たちを受け入れる。この地から遠望する東京の夜景、そのシルエットを描いたパースペクティブはあくまで空虚で、だが密やかに美しい。(田所)
STUDIO WORKS SELECTION ページ