佐藤玄弥「地域のいえ -地域拠点としての新しい在り方の提案-」
https://gyazo.com/0c1b24e374c2a6517ff71aeb014f30a6
日本は高度経済成長期以降、父は働き、母は家事と育児を行うという家族のカタチが定着し、子どもは母親と長い時間を過ごしてきた。現在では、一人一人の自律性や選択の自由が増し、女性の社会進出などによって、夫婦間の役割も固定化されない関係性が当たり前になってきている。この傾向は今後ますます加速し、共働き世帯やひとり親世帯などが増加、将来的に子どもと親が一緒に過ごす時間が極端に少なくなってしまうことが予想される。一方、近年では在宅勤務や遠隔授業が浸透するなど、働き方も変化し、今よりも場所に縛られない働き方が可能になるだろう。これらの変化を受け、子どもと親が一緒に過ごす時間を確保しつつも地域全体で子どもを育てていくことができ、一人ひとりの居場所となるような複合施設を提案する。
ー平面ダイアグラムー
https://gyazo.com/65be09cb530f1c6d0ed00824fb439174
01.生活に密着した働き方
現在、仕事場は固定され、そこへ通いながら仕事をするのが一般的である。近い将来、働き方の自由も尊重され始め、場所に縛られない働き方をする人が増えるのではないか。一方で、共働き世帯やひとり親世帯も増加し、子どもと親が一緒に過ごす時間を十分に確保できない家庭が増えてくるだろう。
これらの社会状況を踏まえ、子どもと同じ屋根の下で働くという、新たな働き方を提案する。この建物内には子どもが活動するスペースと親が仕事するスペース両方が内包されている。昼は子ども食堂でご飯を食べたり、見守りながら仕事をしたりと、生活に密着した働き方を可能にする。また、地域とのつながりを常に持ちながら生活できることも大きなメリットになる。
02.地域の核となる避難場所「核シェルター」
地下シェルターとは、他国からの軍事侵攻の際、市民の身を保護するためにつくられたものである。世界情勢は予測しづらく、将来的に日本が軍事侵攻されることは否定できないが、それにも関わらず日本の普及率は著しく低い。世界の主要な国々の人口あたりの普及率を見ると、スイス、イスラエル、ノルウェーは100%、アメリカが82%、ロシアが78%と続く。これに対し日本の普及率はわずか0.02%。1万人あたり、たった2人しか身を守ることができない現状だ。住宅にシェルターの設置が義務付けられている国もあるが、設置費用は決して安価ではなく、住宅購入のハードルが高くなってしまう。
そこで、このような公共施設に大規模な地下シェルターを設置することを考えた。2050年、周辺の集合住宅や公共施設も地下シェルターを備え付けていると予測し、地下2階には他のシェルターと接続し地下都市を形成するための通路を設けている。また軍事侵攻のような侵攻極めて稀に起こる災害でなくとも、自然災害が多い日本において、シェルター空間は日頃から地域の人々を守るための役割を果たすことができるだろう。
03.居場所の提供
現在の子ども食堂は食事を提供するほかにも、子どもやその親の居場所を提供することに役立っている。その延長となるよう、多世代の人々に対しての居場所を提供することを試みた。
子ども食堂の他に、小さい子どものための「キッズスペース」や昼寝ができる「おひるねスペース」、地下1階にある青少年のための「こどもラウンジ」と周辺のスペース、体を動かすことができる「アクティブスクエア」、賑やかな場所に身を置ける「カフェラウンジ」や「交流スペース」、集中して作業したいときに利用できる「作業スペース」などの居場所を備えている。
また、地下2階には簡易宿泊のできるカプセルホテルがあり、生活のほとんどをこの場所で過ごすことも可能となっている。
ー1階平面図兼配置図ー
https://gyazo.com/84a94affbd41c41e9cec89bb473e72c9
1階は子ども食堂を中心として、公園と一体化した計画が特徴的である。子ども食堂にはスロープや水辺空間などを経てアクセスできるようになっている。また遊歩道から地下1階にアクセスできるようになっており、閉鎖的になりがちな地下シェルターと公園との接続性を高めている。
https://gyazo.com/fd05501af61966b939284000acf3f19d
ー各階平面図ー
https://gyazo.com/e6f292a36f8d28dbc36988964ba92302
2階は多世代の人々が交流できる空間となっている。遊歩道に向かって張り出したカフェラウンジや広々としたテラス、暗くなりがちな建物を照らす中庭など、魅力的な場所が多数存在する。大きな吹き抜けは1階との繋がりを持たせ、他の階の雰囲気が感じられるようになっている。
3階は仕事をするためのスペースが多くを占めている。左側には大きな屋上庭園があり、作業の合間にリラックスすることができる。2階からは大階段でダイレクトにアクセスすることができる。階段としての機能だけではなく、聴衆が腰掛けることでプレゼンテーションなども行える。
地下1階は子どもたちのための空間になっている。アクティブスクエアは遊歩道からダイレクトに地下シェルターへアクセスすることを可能としている。シェルターの内部は日常的に子どもたちのための空間となっており、友達と自由に過ごすことができるようになっている。
地下2階はこの建物の心臓部分ともいえる場所である。頑丈なシェルターの中に機械室や非常発電設備を備えることで、有事の際も建物の機能を保つことができる。シェルターから外に通路を伸ばすことで他のシェルターと接続しており、地下空間を拡張している。また簡易宿泊機能を備えており、日常的にはカプセルホテルとして機能する。
https://gyazo.com/d3e46007e7f1bea80fb7baa191ccbf40