建築設計Ⅳ/2022年度
建築設計Ⅳ/2022年度
https://gyazo.com/7bda5f19bd7fd89309276317b44be18b
これまで取り組んできた課題では、与えられた「敷地」の中で設計を行ってきました。一般的には、敷地の中に立てられるものが建築物であり、建築基準法もその中で適用されます。しかし、私たちが住む世界の風景は、個別の敷地内の建築物のみで構成されているわけではありません。また、コロナ禍の影響もあり、日本でもようやく歩道や車道上を人々の活動の場とする試みなども増えてきつつあります。敷地の中だけで閉じて完結する建築ではなく、法規や慣習的な区分を超えて、これまでとは異なった視点からの設計を試みてください。道路や河川、公園といった敷地以外の場所での計画、土木構築物と建築の融合、あるいは敷地外の場所から得られた学びを建築物に適用して設計するといったことも考えられるでしょう。設計の対象とする場所は、大学周辺(千代田区内)とします。
近年、子ども支援の一環として行われている活動として「こども食堂」が全国に広がっている。こども食堂とは、地域住民や自治体が主体となり、無料または低価格帯で子どもたちに食事を提供するコミュニティの場である。最近では単に「子どもたちの食事提供の場」としてだけではなく、帰りが遅い会社員、家事をする時間のない家族などが集まって食事をとることも可能な、地域のコミュニケーションの場として機能を拡げている例もある。本課題ではこども食堂が作られた社会背景と目的やメリット、こども食堂の活動から生まれる課題を考え、これからの社会のなかで必要とされる機能・用途を組み合わせ、都市のなかでの人々の生活のハブ空間となる新たな複合施設の提案を望む。
・敷地:文京区関口:区営関口二丁目アパート敷地及び隣接する江戸川公園
ごく単純に言えば、住宅とは食べて排泄して寝るところ、すなわち消費のための場所といってよいでしょう。かつて住宅は、消費だけでなく、農作業や家畜の飼育、販売といった生産のための場所でもありました。しかし、近代以降、時代の変化とともに集約的な空間は分化・純化し、現在の消費のみの住宅となったわけです。近年、住宅を取り巻く状況は変化しつつあります。小規模ながら生産活動が住宅に組み込まれることも見られるようになりました。そこで、生産と住宅をさらに緊密な関係に置くことで生まれる新しい住宅の可能性を考えてください。可能性を広げるために、住宅は単一ではなく複数の集まりがいいですね。また、どんな生産活動を組み込んでも構いません。ただし、まったく住宅の枠組みから外れてしまうのも違うでしょう。もしかすると、これは住宅の境界線を探る作業なのかもしれません。その他の条件は課題説明時に提示します。
2020年代前半は、未来の建築史の教科書にどのように記述されるのでしょうか。COVID-19の影響で暮らしは大きく変わったように思いますが、少し大きな時間軸で捉えると、この変化はどのように建築や都市に現れていくのでしょうか。そんな風に、今を少し俯瞰して捉える視点と、今現在、向きあっている変化そのものを観察する眼差し、その両方で商いの場を考えてください。商いは物を売ったり買ったりと、必ず取引する他者がいます。商いの場は、商店街や市場、スーパーマーケットやデパートであったり、ショールームのような体験する場であったりとさまざまな形が考えられますが、商いの場はその目的から、老若男女皆に開かれています。そして、ネットショッピングとの大きな違いは、多様な参加者がそこに共にいることではないでしょうか。現代における、人間の感性に訴えかけ、人間の感じる力を引き出す、現実の商いの場を考えてください。
ファッションでも、音楽でも、アートでも、広告でも、飲食でも、コンテンツ単体ではなく一連の作品群としての存在が、力や意味や特別なストーリーを持つことがある。このスタジオでは、設計論として「コレクション」というテーマを元に建築を考えてみたい。現代的なコンテンツ(一見建築からは離れたものが望ましい、各人の趣味などでもよい)を選択、事例のタイポロジカルな分析でその本質を探り、要素のモデル化・カタログ化を通じて建築へ応用する。多数のモデル分析によって生まれる建築は、「部分」の集合的な建築=「コレクションの建築化」なのか、建築そのものの複数化「建築のコレクション化」なのか、あるいは別の形なのか。それは建築のアイデンティティへの問いでもあり、建築とメディアの問題でもあり、空間に情報を付与した新しい体験のデザインでもある(かもしれない)。敷地はなし、プログラムや機能は最後に考える。
モノ消費からコト消費への移行、コロナ禍によるリモートワークの普及など都心部の都市開発プロジェクトは複雑な状況に直面している。しかし、施設やインフラの更新時期にあり、建築物の建て替えや都市開発の機運は各地で立ち上がりを見せている。そのような中で、せっかく都市開発プロジェクトが動いても、テナントの未入居・撤退による空室化など、人々に使われない施設ができるのは事業のみならず街にとって不幸である。本課題では、人々に使われる都心部の複合開発プロジェクトとはどのようなものか構想したい。
これまでの建築設計課題と異なるのは、開発用地には土地の権利者がおり、周辺地域の文脈や歴史、立地特性の読込みなど都市的リサーチが肝となるため、課題書で与えられた設計条件をもとに事業企画から組み立てていくことが必要となる点である。したがって、そうした都市的リサーチと事業企画提案など都市開発プロジェクトの全体像をまとめた企画書(A 3 判)も重要な成果物の一つになる。なお、この課題はたんなるハコモノとしての建築物の設計ではなく、企画立案および「新たな都市生活の提案」であることを心してほしい。