多聴では伸びないリスニングの力
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英語の文献をどんなに読み込んですらすらと読めるようになっても、書く練習をしないと書けるようにはならない。英語は情報を得るためだけに使う、英語でアウトプットする必要はないという人も多いだろう。それはそれでいいが、英語で伝えたいことがある、世界に発信したいというなら、アウトプットの練習をしなければならない。
アウトプットする英語力が最近至る所で求められるようになり、「読む」「聴く」「話す」「書く」の4技能をバランスよく育てるということが学習指導要領にも明記された。文部科学省は大学入試にも4技能のテストを含めようとした。 英語力にこれらの4つの要素が必要だということには、全く異存はない。しかし、4技能をバランスよく育てるために、最初から4技能の学習に同じだけ時間を使うというのは学習の認知過程の観点からは、実は合理的ではない。 語彙が少ないうちは、知らない単語がたくさん含まれる教材を無理に聴く練習をしても意味がない。意味をなさない英語の音声がただ素通りしていくだけである。だからと言って、あまりにも簡単な、面白くもなんともない内容で中学1年生レベルの単語を使って不自然にゆっくりと録音された教材を聴いても(仮にそれが聞き取れても)ビジネスには役に立たない。ビジネスの現場で、そのようにゆっくりした内容が薄い会話がされることは絶対にないからである。
自然なスピードで話され、中身がある内容を聴きたいが、語彙が足りなくて聞き取れない。そういうことが頻繁にある。そのような場合にどうしたら良いか。リスニングに時間を使うより、まず語彙を強化することと、その分野の記事や論文を読んで、その分野のスキーマを身につけることに時間を使った方がいい。語彙が豊富にあり、スキーマが働くトピックなら、そして自分が絶対に理解したいと思うような内容であれば少し耳が慣れれば英語は自ずと聴こえるようになる。