家族研究の歴史外観
家族研究の歴史外観
家族研究はスイスの文化人類学者ヨハン・バッハオーフェンの 『母権制 (バッハオーフェン)』 (1861 年) から本格化
現代家族社会学では母権制の存在が否定されている
バッハオーフェンの思想はアメリカの文化人類学者ルイス・モーガンに継承され 『古代社会』 が刊行
その思想はエンゲルスの 『家族、私有財産、国家の起源』(1884 年) に継承
筆者はそれらの問題点を指摘
トッドの指摘
バッハオーフェンの 『母権制』 などは 「あらゆる誤りの生みの親」 と批判
当時、父系社会の中に生きていたバッハオーフェンは、女性を蔑視する傾向を持ち、過去の家族制度を劣ったものとして理解するために、劣った女性が権力を持つ社会と見做した
トッドはモーガンが、「野蛮、未開、文明の三段階で人類は進化するとする人類学的進化論の絶頂に他ならない」 と辛辣に述べる
しかもモーガンは、その理論にニューヨーク州のイロコイ族が母系制であると詳しい説明を付け加えたことから事態はさらに悪化したという
イロコイ族は女性の指導者を有していたが母権制ではなく、悪い事にはアメリカインディアン部族のすべてが母権制ではなかった
エンゲルスはこの間違いをマルクス主義を正当化するために 『家族、私有財産、国家の起源』 を通じて据え付けた
フレデリック・ル・プレイは 3 つの家族類型を定義
1. 不安定 (核) 家族 : 子どもの独立、遺産の均等分配によって家族は二代か三代で霧散する
2. 直系家族 : 子どものうち一人が跡取りとして両親と同居する。だいたいは男児長子。末子相続もある。三世代家族を形成し、安定的な家族運営となる
3. 家父長 (共同体) 家族 : 男児すべてが嫁を娶った後に両親と同居し、集団を形成する。女児は他家に嫁ぐ。
そして、核家族から直系家族へ、それから共同体家族へと移行したという
家族機能に関して
第二次世界大戦直後、ジョージ・マードックの 『社会構造』 (1949 年) の核家族論において 4 つの家族機能論を発表
マードック以降、アメリカのウィリアム・オグバーンが家族機能は、ほとんどの家事・育児等が外注化され、愛のみが残ったとの家族機能縮小説を主張
タルコット・パーソンズが反論して、①成人のパーソナリティの安定、②子どもの第一次社会化‐の二つの機能は残っているとした
参考文献
家族論の思想的系譜と家族機能を補完する社会福祉政策の考察 ―トッド『家族システムの起源』を手掛かりに―