全体主義
「全体主義」 という言葉を明確な意味で使い始めたのは、イタリアのファシズム政権やドイツのナチス寄りの知識人たち
1920 年代後半から、ベニート・ムッソリーニたちが自分たちの運動を全体主義と形容するようになった
ムッソリーニらは、西欧の自由主義は人間の自由を抽象的・観念的にしか捉えておらず、現実と遊離していると批判
自分たちこそが国家の中で生きる現実の人間の自由を考えているとした
各人を共同体としての国家に再統合するファシズムの理念の意義を強調
そうしたファシズム国家を 「全体主義的」 と形容
人間の生活全体を把握する、社会生活の全体を包括する、というようなポジティブな意味合い
一方で、西欧諸国では、個人を国家に組み込む体制 (個人を国家という共同体のために生きるよう教育する体制) の異様さを表す言葉として 「全体主義」 が使われるように
例えば、ナチズムなどを全体主義と呼んで非難
米ソ冷戦の状況が生まれると、ソ連などの社会主義国を念頭において 「全体主義」 という言葉を使うようになった
ハンナ・アーレントは、全体主義を 「大衆の願望を吸い上げる形で拡大していった政治運動 (あるいは体制)」 であると、と捉える
参考文献
悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える