マスキュリニティとスポーツ
スポーツは、喜びや敗北の涙のようなかたちで男性が極端な感情を表現することが許される、数少ない機会のひとつ カジュアルなスポーツ体験から、男の子たちは、以下のようなことを学ぶ
交渉のしかた、競争のしかた、他人との関わりかた
公共のスペース (公園や校庭や体育館など) を自分たちの居場所として主張するすべ
女の子が男の子に交じって公共スペースの中にいなければ、結果として、女の子がその場所を失うだけでなく、男の子は、女の子には自分たちほど公共スペースを占める権利がないのだ、と信じるように
男の子と女の子が一緒にプレイし競争しなければ、男の子は女の子をチームメイトや競争相手として見なすことを学べない
そうして徐々に、男の子はほかのスペースを占有することも学習
当初、スポーツは社会的に優位な少年たちのための活動だった
労働者階級や有色人種の若者が組織スポーツに参加することが許された最初の理由は、彼らを社会化し、当時の権力構造の仕組みを叩き込むため スポーツのコーチや審判を務めていたのは、慈善団体に所属する白人の成人男性たち
スポーツ (特にラグビー) は、若者に宗教的価値観を教え込むほか、女性の間に高まっていた独立気運に対抗する手段となった ラグビーは、男性だけのスポーツであることに加え、女性に向かって尻を出して見せたり、下品な酒宴の歌を歌ったりという付随的活動の効果もあり、男性たちがマスキュリニティを主張する手段となった これまでの 150 年間、スポーツは青少年を鍛え、愛国心を表明し、人種差別的態度を維持し、恨みを晴らし、性衝動を抑制し、地元経済を活性化するために利用されてきた 有毒体育会系はスポーツ文化の最も悪い特性を体現しているが、ポピュラーカルチャーでは敬われて評価されている 例えばエナジードリンク企業が、キャンペーンにおいてこの有毒な傾向を習慣的に利用
男らしさの理想を信じ従っている度合いが高いほど、ドリンクとマスキュリニティを関連付けるマッチョなマーケティングに影響されやすく、ドリンクの消費量が増える
エナジードリンク業界はスポーツやパフォーマンスに関する若い男性たちのジェンダー不安につけこんでいる アイスホッケーのようなスポーツにおいて、暴力は不運な副産物ではなく、欠かせない中心要素のひとつ 暴力性が減ったことで、家族の反応にも影響があった
自分の息子のチームでコーチを務めている別の父親は、リンクサイドの過熱状態を 「狂乱保護者症候群」 と呼ぶ 合意なしに女性に触ったりキスしたりできると自慢するのは、男だけの空間では普通の会話だ、という意識
若い男性たちがスポーツ界での成功を追い求める過程で、若い女性たちが報酬として利用され、巻き添え被害にあうということは、繰り返し起こっている
大学フットボール界では、悪名高い性的虐待・レイプ事件がいくつも起こっている
女性を性的対象物と見なす風潮は、フットボールというスポーツの一部になっている 入学前の学校見学から、引く手あまたの新入生候補は、魅力的な女性の 「ホステス」 に出迎えられ、キャンパスを案内される 未成年の有望選手候補を誘致するため、ストリップクラブに連れて行くことや、女性をあっせんして性行為をさせることなどが行なわれていたという主張も ウェイド・デイビスは、アスリートたちの言葉使いについて、その意図と影響とを区別して考えている 彼らが女性やゲイの男性についてジョークを言うのは、多くの場合、実際に憎しみや軽蔑の念があるからではない 自分たちはそういう態度を取るものだ、と思い込んでいるから
参考文献