イノベーションの再現性を高める新規事業開発マネジメント
筆者について
新規事業開発やイノベーション創出を手がけてきた
2015 年に株式会社 Relic を創業
日本が伸び悩んだ平成は 「失われた 30 年」 とも言われている
現代は VUCA → プロダクトライフサイクルが急速に早まっている
楠木建教授が 「経営はすべて特殊解」 と言っているのと同じように、イノベーションもケースバイケース
『イノベーションのジレンマ 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき 増補改訂版』 や 『リーンスタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす』 などで提示されるように、一般化・理論化できている部分もある
しかし、それらを実践するにも、全体像を俯瞰できていなかったり、成功の要否を分ける変数・要素の理解が不十分などで、困難な場合が多い
本書の新規事業は、スタートアップではなく、既存事業が存在する企業での新規事業を想定
両利きの経営に論じられる、知の深化と知の探索の高いレベルでの両立が必要
1 章 なぜ今、新規事業やイノベーションが必要なのか?
世界から見た日本のイノベーション力
国内市場は縮小
少子高齢化などの社会課題に他の国よりも早く直面
SDGs、EGS に注目が集まる
日本でもスタートアップブーム
が、ベンチャー企業やスタートアップだけでは日本の再興は難しい
日本はまだ終身雇用で流動性が低く、大企業人気
VUCA、プロダクトライフサイクルが早く短く → どんな企業も DX やデジタルイノベーションが必要
本書は大企業における新規事業やイノベーションについて
2 章 新規事業開発は、なぜうまくいかないのか
成功確率はセンミツ (1000 に 3 つで 0.3 %) とも言われる
多産多死を前提に
企業内新規事業とスタートアップの違い
企業内新規事業がうまくいかない理由
3 章 いかにしてビジョンを描き、新規事業開発の方針や戦略を策定するか
TBD
『TOPPOINT 2021 年 11 月号』 より
ここ数年の日本では新規事業やイノベーションへの関心が高まっているが、新規事業開発がうまくいっている企業は少数
うまくいかない理由は 3 つ
1. ビジョンや新規事業開発への方針・戦略がない
2. 良質な 「多産多死」 を実現するための組織になっていない
例えば既存事業向けの評価制度のままで新規事業に関わる人の評価をしてしまう、など (既存事業では失敗しないことが出世の近道になりがちだが、新規事業開発には適さない)
3. 自社の性質や事業の不確実性に応じた事業開発プロセスを実行していない
状況に応じた手段を取るべきなのに、リーンスタートアップやオープン・イノベーションといった手段が先行してしまう
スタートアップのようなひたすらアイデアを出して顧客の声を聞く、というのを真似するのも不適切 → 既存事業の資源や人的リソース、顧客基盤などの経営資源を活用せよ
スタートアップと既存企業の新規事業開発は違う
スタートアップは 1 つの事業に集中して急成長を目指すので、事業のビジョン・戦略と企業のビジョン・戦略がほぼ一致
既存企業にとっては、新規事業開発は全社戦略や成長戦略における手段の一つに過ぎない
7 つのステップ
1. 全社ビジョンを明確にして、企業としてどこに向かうのかを示す
2. ビジョン実現に向けて、なぜ、今、新規事業に取り組むかの意義を示す
3. 既存事業の干渉を受けない新規事業原資を確保
4. テーマや領域、事業内容を定義
5. 目標の目線合わせ
6. 誰がどのように新規事業開発をするかのアプローチを検討
7. 何に対していくら投資するかの適切なポートフォリオを組む
戦略があっても実現されなければ意味がない → 質の高い挑戦を量産して継続できる 「組織と人材」 が必須
組織づくりの 4 ステップ
1. 希少なイノベーター人材と良好な関係を築き、マネジメントする
まずはイノベーター人材は希少であることを認識する
社内外のイノベーター人材と良好な関係性を構築 → その能力や成果を最大化できるように支援する、という考え方を組織に根付かせる
これをイノベーター・リレーションシップ・マネジメント (IRM) と呼ぶ
なぜそれが必要か?
1. イノベーター人材は希少
2. イノベーター人材は流動性が高いので、関係性が良好でないと流出してしまう可能性
3. 従来の企業における組織や制度はイノベーター人材を重視して設計されていないので、意識して取り組まないと関係性が悪化する可能性
2. イノベーター人材の発掘・配置
3. イノベーター人材が直面する壁や課題を知る
イノベーター・ジャーニー・マップ (IJM) の活用
4. 健全な多産多死を構造的に実現する組織文化や仕組みの構築・定着
#書籍