フィードバック
ジョン・ハッティ著, 山森光陽監訳,
「教育の効果 メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化」より引用 学力に対して大きな影響を与えるフィードバックとは、学習者から教師に与えられるものであることに気づいてはじめて、フィードバックの概念の理解の糸口をつかんだのである。学習者が何を知っていて、理解していて、どこでつまずいていて、いつから間違えるようになり、またいつから学習に取り組めなくなったのかといったことを、教師が学習者の側から得ようとしたり、また少なくともこれらのことに目を向けるようになったりすることで、指導と学習とが一体化され、学力を高めることにつながるのである。教師が学習者からフィードバックを受け取ることが、見通しの立つ学習の実現につながるのである。(P.170)
フィードバックとは以下の3つの問に対する答えとなるようなもの(P.174)
「どこに向かっているのか」(学習目的、達成目標、到達基準):フィードアップ
「進み具合はどうか」(自己評価):フィードバック
「次に何をすべきか」(次の段階、新しい目標):フィードフォワード
フィードバックの4つのレベル(P.173-175)
課題遂行レベル
課題や成果の正誤についてのフィードバック
より多くの内容を、また正しい知識を習得すること
たとえば、「あなたはベルサイユ条約についてもっとよく知る必要がある」といったようなフィードバック
課題解決の方法を理解する過程のレベル
情報処理過程や、学習内容の理解や学習課題を解決したりするための学習過程に働きかけるもの 「あなたの文章の中のこの表現に着目して手直しすると、読み手があなたの言いたいニュアンスを理解しやすくなる」であるとか、「以前話題にした論理構造を使って書くと、このページは筋が通ったものになる」といったフィードバック
学習者の自己調整能力や自己評価能力、さらに集中して学習に取り組めるような自信を高めるためのフィードバック 「作文で主張を書き始めるにはどういったことが大事なのかわかっているのですから、それがこの作文の第1段落に書いてあるか確認してみましょう」といったフィードバック
このようなフィードバックを与えることは、自己効力感、自己調整能力、学習観に対して大きな影響を与え、ひいてはよりよく、また効率的に課題解決を継続できるようになることにつながる 自己レベル(課題との関係を持たない)
「学習者自身」に向けられたフィードバック
多くの場合、課題解決能力とは無関係な内容のもの
たとえば「すばらしい」とか「よくできました」といったもの
自己レベルのフィードバック(褒めること)は全く効果的ではない
褒めることは先に挙げたフィードバックで応えるべき3つの問いとは全く関係がないため、学習を促進することにはつながらない
フィードバックが学習者個人のことに対する注意を引き出すと、自身の身に降りかかるリスクを最小限にとどめるために、学習者は挑戦的な課題に立ち向かうことで起こりうる失敗を回避しようとしたり、努力を最小限にとどめたり、失敗に対して高い不安をもつようになったりする(Black & William, 1998)