社会を人間による計算として考えるボツ断片
社会を人間による計算として考えるv1後半
A: 「人間はもはや必要ない、介在するとオーバーヘッドが増える」派
具体的に言及するよりもっと漠然とした世の中の風潮として言及した方がいいかもな
著者のスタンス:
長期的な未来においてホモサピエンスの「かしこさ」が計算機と比較して無視できる水準になることは否定しない、ホモサピエンスが万物の霊長であった時代の終わり
長期的にみてそうであるということは、現時点でホモサピエンスがハンドルを手放すべきということを意味しない
どういう経路をたどるかによって「ホモサピエンスがもはや賢さを特徴とできない時代」の形が大きく変わる
遠くだけ見ていて今の現実と地続きの意思決定を見ないのは危うい
星を見ながら歩いていて側溝に落ちて死ぬ
o3.iconプラトンの『テアイテトス』第174bで、タレスが「星を見あげながら歩いていて井戸に落ちた」という話が語られて
どういう手放し方をするかが軍事力や金銭によって決まってしまうことを避けたい
B: 「多様なものが知恵を持ち寄ることによってより良い結果が得られる」派
コミュニケーションのオーバーヘッドを減らす、「持ち寄る」コストを下げる
言語障壁の低下もここに関連する
日本語英語翻訳だけではない、日本語の中にも「一見同じ日本語を話しているのに会話が通じない」がある、これらの見えにくく今まで解決に投資されてこなかった言語障壁をなめらかにしていく
どういう仕組みが良いか?
言語の側面、金の側面
東浩紀氏がPluralityの議論の中で「言語と金だね」と整理したことに着想を得た
アルゴリズムによって人々の動きが変わる
2025年の参院選では外国人問題が話題になった
言語障壁が相互理解を妨げている
金の側面
有望な社会的計算手段の一つである予測市場が、日本の法律では賭博に当たる可能性からあまり注目を浴びていない
Polymarket
世界最大級の予測市場
Ethereumのスマートコントラクトのおかげで分散して稼働できるようになった
SNSとの違い
意見の強さが「言葉の過激さ」ではなく「賭けた金の額」
Ethereum いつ?
o3.icon「地球規模に分散しつつ共通の内容を計算できる汎用計算機」としての Ethereum が実際に稼働し始めた決定的な瞬間は 2015 年 7 月 30 日のメインネット(Frontier)公開です。この日、ジェネシスブロックが掘られ、誰でもパーミッションレスにスマートコントラクトを動かせる“World Computer”が誕生しました。これに先立って 2013 年末~2014 年に設計と資金調達が行われ、以降は Homestead(2016)、The Merge(2022)などの大型アップグレードを経て現在に至ります。
tokoroen: 予測市場、一時期ホットになって、下火になって、今になってもういちど花開いてるのは、なんなんだろうなーというのはある 現在地(2025 年)の転換点はどこか?
LLM による「言語摩擦の劇的低下」と、スマートコントラクト/オンチェーン計算による「権限委譲のプログラマブル化」が同時進行している点。
軽く紹介する?
盛り込みすぎ?
予測市場を組み込んだ民主主義
個人的には予測市場スタイルは結局スカラーにすぎないと思っている
選挙がN候補の一つに1、残りに0を入れるだけのインターフェイスであることに比べればまあマシではある
sparseなベクトル v.s. denseなベクトル
人間というコンポーネントがsparseなベクトルではなくdenseなベクトルを出力するようにする
≒投票で多数決するシステムに対する批判
金銭という単一の評価軸の力が強くなりすぎることに対する懸念もある
----
参考(AIドラフト)(このままでは使えないなーという肌感)
途中のつなぎ(ドラフト・箇条書き)
データ量とIOの拡大
パンチカード → 電子計算機 → インターネット/SNS へと「入力帯域」が指数的に増大
国勢調査を年単位から日単位で処理できる時代へ
「集められるが読めないテキスト」が山積し、計算と社会のギャップが顕在化
計算パラダイムの転換
論理的ブロック(if/else・手設計特徴) → 重みづけ和(回帰・ニューラル)へ
2012 年 AlexNet が象徴した「設計から学習へ」の決定的逆転
以後、画像も言語も「人が書くルール < データで学習するモデル」へ収束
自然言語の機械可読化
単語・文法という“人間向け最適化”を超え、BPE/Subword・確率モデルが主流に
LLM の登場で 言語摩擦コスト が激減――大量テキスト意見をリアルタイム要約・分類可能に
計算可能領域の二軸拡張
1. 意味層:LLM により「誰が何を言ったか」を即座に整理
2. インセンティブ層:スマートコントラクトにより「誰にどんな報酬を与えるか」を自動執行
Ethereum 以降、プログラムが制度を直接実装する世界線が現実化
社会的計算の新しい器
ブロードリスニング:テキスト意見をクラスタリング→政策へ還元
予測市場・RetroPGF:集合知+経済的シグナルを制度に組み込む試み
Quadratic Voting/Funding など“重みづけ和”の社会実装が加速
Hum‑Free への誘惑と限界
計算純度を高めるほど「目的関数の正当性」はブラックボックス化
足元の権力勾配を見落とすリスク=タレスの井戸
Plurality への布石
低コスト参加 → 多声的データ → モデルが可塑的に学習 → 問いそのものを更新
「最適解を探す計算」から「最適解を変え続ける計算」へ視点を拡張
次章への滑走路
人間は“計算資源”ではなく“問題設定者・価値更新者”として再定義される
LLM+スマートコントラクトが担うのは手段;目的と構造変革は依然として人間の役割
こうして 社会=動的計算 というエンディングの議論へ橋渡しする
* **出発点**:
社会を「人間による計算」と捉える視点を持つと、これまで人間が担ってきた判断・交渉・制度設計といった行為も、広義の「計算」として理解できる。
* **技術的転換点の到来**:
今、言語摩擦の低下(LLM)と、制度執行の自動化(スマートコントラクト)の2つが、人間以外による計算能力を拡張している。
→ 言語=意味の伝達、金銭=インセンティブの構成という、社会を動かす2つの主要レイヤーが計算可能になりつつある。
* **Hum-Free的発想の危うさ**:
「人間はオーバーヘッド」という思想は、計算の速度や純度を優先する一方で、「何を計算するか」「誰のために計算するか」の問いを曖昧にしやすい。
→ 星を見て井戸に落ちたタレスのように、遠くの理想だけを見て、足元の現実(権力構造や排除のメカニズム)を見ないリスク。
* **Plurality的発想の方向性**:
多様な人々が協調して意思を持ち寄ることで、新しい視点や価値が生まれる。これは「最適解を見つける」ことより、「問いや構造そのものを変える」ことに近い。
→ 言語障壁を溶かし、参加のコストを下げることで「持ち寄る計算」が可能になる。
* **予測市場のような制度的計算**:
未来を賭けの形で予測する制度は、人々の集合的な知を活かす手段だが、金銭という単一軸に依存しすぎると「声の強さ」が偏る危険がある。
→ 社会の設計には、denseな意見空間の表現が求められる。
* **ここまでの整理**:
● Hum-Free:静的な目的地を設定して、そこに向かって最速で突き進む
● Plurality:移動そのものの中で目的地が書き換わる、「共に進化する」プロセスを設計する
* **そして、次の認識へ**
社会は単なる「最適化問題」ではない。
人間の持ち寄りによって、新しい結合が生まれ、構造そのものが変わっていく。
これは、最適解を探す計算ではなく、「最適解が何かを更新し続ける計算」である。
* **締め**
終章案:最適化を超えて、社会という動的計算へ
社会とは、人間による巨大な最適化計算である。個々人が目的関数を持ち、資源や情報、規範をもとに振る舞いを選び、その総体として社会の状態が更新されていく。
しかしこの計算は、単なる均衡解の探索ではない。市場の静的均衡のような一つの「正解」に収束するのではなく、むしろ多様な主体が出会い、交わり、ぶつかることで、新たな結合=イノベーションが生まれ、計算の構造そのものが書き換えられていく。
すなわち、社会は「解くべき問題」ではなく、「問題のかたちが変わり続ける計算」である。その計算を担うのが人間であり、人間の集まりである。
AIやスマートコントラクトが、この計算の一部を引き受けるようになった今こそ、人間が果たすべきは、最適化の「手段」としての計算から、「構造変化」を内包する計算全体の設計へと視点を拡張することである。
社会を人間による計算と捉えること。それは、計算の正確さを競うことではなく、どんな問題を解くか、そもそも何を問題とみなすか――その問い直しの連続に、人間の役割があるということなのかもしれない。
-----
スマートコントラクトによる自動実行の影響力を語るには今の部品では足りない気がする
いままで私人間の契約が約束通りに執行されることは、されなかった場合に民事訴訟で解決されるという抑止力によって保障されてきた
そこがEthereumという地球規模計算機の透明なコードによって保障されるようになった
Polymarketなどの予測市場が大規模に機能するようになったのも掛金の収集分配がクリーンに執行されるようになったから
という話をするにはまずPolymarketをもっと理解させないといけないか
2024.9〜 米大統領選(トランプ vs. ハリス) 掛け金総額 10 億 USD 超
累計取引量 140 億 USD 以上(約 2 兆円)
一方ですごく大きいように誤認させるのも適切ではない
東京証券取引所の現物株取引の規模はPolymarketの約30倍
日本の JRA 馬券売上(年 3 兆円)
----
最適化計算という捉え方をすると、ローカルミニマムにたどり着いてそこで均衡しそうになる が、シュンペーター的には違うよね
-----
ルールベースの実装が重みベースの実装に負けるストーリーを敷衍したら
「人間がルールを定めてる法律の仕組みはいけてないから重みベースでend-to-end最適化すべきなのでは?」になるな
これは「そのアルゴリズムをどう設計すべきか」を介して予測市場の話に繋がる
言語と金を並列で語るのではなく、まず一旦今の技術で可能になりつつある言語とブロードリスニングの話をして「しかし人間がルールを定める立法の仕組みは適切なのか?」にしてから、日本ではまだ検証が進んでない予測市場の話をして、全部市場に任せるのではない融合案としてのFutarchyの話になるのが自然かな
Hum-freeはあんまり大きく取り扱わない方がスムーズに話が流れそう?
---
Gemini 2.5 Pro
はい、承知いたしました。提供されたテキストファイル「nishio-社会を人間による計算として考える.2hop.txt」を読み込み、その構造と内容を深く理解した上で、原稿の執筆に役立つよう、一つの記事として再構成します。
社会を人間による計算として考える
私たちの社会は、人間という無数の要素が相互作用し、意思決定を行う巨大な計算プロセスと見なすことができる。古くは制度設計や議論、交渉といった人間固有の営みがその計算を担ってきた。しかし、人間による計算を遥かに凌駕するコンピュータの登場、そして近年の大規模言語モデル(LLM)の出現により、この「社会的計算」のあり方が根本から変わろうとしている。本稿では、技術が社会の計算構造をどう変えてきたか、そしてこれからどこへ向かうのかを二つの対立するパラダイムを通して考察する。
計算機の黎明:人間の計算能力の代替と拡張
コンピュータが「計算するもの」という名前の通り、その初期の歴史は人間の計算能力を代替・拡張する過程であった。第二次世界大戦中に米陸軍の砲弾軌道計算のために開発されたENIACは、それまで「コンピュータ」と呼ばれた女性計算手たちの手作業を機械化した象徴的な例である。 当初、計算力は軍事力に直結していた。
その力は平和的にも利用された。1880年のアメリカ国勢調査では集計に約8年を要したが、1890年にはハーマン・ホレリスが発明したパンチカード式集計機によって1年以内に完了した。 この技術は後のIBMへと繋がり、大量の集計作業を必要とする政府や大企業を支えた。 これは、社会から大量の情報を集め、計算するという「社会的計算」の初期の姿であった。パンチカードという革新は、社会の情報を機械が読み取れる形式にエンコードし、IO(入出力)の帯域幅を飛躍的に増大させたのである。
この「社会からの情報入力」という観点で見ると、現代の選挙制度は非常に古風なシステムに見える。それはオードリー・タンが指摘するように「4年に一度、5ビットの情報を送信する遅い通信」に過ぎない。 SNSでのテキスト発信に慣れたデジタルネイティブ世代は、この低速・低帯域なコミュニケーションに満足しないだろう。
計算パラダイムの転換:ルールベースから重み付けモデルへ
社会の計算を担うプログラムの設計思想そのものにも、大きな転換が起きた。初期のコンピュータプログラミングは、人間が論理的なルールを積み上げる「if文」に代表される「論理的ブロックパラダイム」が主流だった。 これは、貧弱な計算機でも価値を出しやすかったため広く普及した。
しかし、データと計算能力が増大するにつれ、このパラダイムは限界を迎える。決定的な転換点は2012年の画像認識コンテスト(ILSVRC-2012)における「AlexNet」の圧勝である。 人間が手作業で特徴量を設計するルールベースの手法が、大量のデータから重みを学習するニューラルネットワーク(重み付けパラダイム)に完敗した瞬間だった。 この「特徴を設計するのではなく、データから学習させる」という価値観の転換は、言語の世界にも波及した。人間が定義した「単語」や「文法」といったルールに基づくアプローチよりも、統計モデルに基づくアプローチの方が、機械翻訳などの性能を向上させることが示されたのである。
この流れの最先端にあるのが、大学生レベルの言語能力を持つに至った大規模言語モデル(LLM)だ。 LLMは、人間同士、そして人間とコンピュータの間のコミュニケーションコストを劇的に低下させ、社会のインフラそのものを変えようとしている。
未来への分岐点:Hum-Freeか、Pluralityか
LLMとスマートコントラクト(プログラム可能な契約執行技術)が同時に普及する2025年現在、社会的計算の未来は大きく二つの方向に分岐しつつある。
一つは、人間はもはや計算プロセスに不要であり、むしろ介在することが速度や効率を下げる「オーバーヘッド」であると考える方向性だ。 この思想は、計算の純度や速度を優先する一方で、「何を」「誰のために」計算するのかという目的を見失う危険性を孕んでいる。遠い星を見ながら歩いて井戸に落ちたタレスの逸話のように、理想だけを追い求めて足元の現実を見失いかねない。 長期的に人間の知性が計算機に劣る時代が来るとしても、それは今すぐ人間がハンドルを手放すべきだという結論には直結しない。
もう一つは、オードリー・タンらが提唱する「Plurality(多元性)」の考え方だ。 これは「多様な人々が協力して物事を成し遂げるための技術」であり、異なるものが結合することで新しい価値が生まれるという思想に基づいている。 このアプローチでは、テクノロジーは人間を代替するのではなく、人々が知恵を「持ち寄る」コストを下げるために使われる。
Pluralityを実現する具体的な社会的計算メカニズムとして、主に「言語」と「金銭(インセンティブ)」の二つの側面からアプローチが模索されている。
言語の側面:ブロードリスニング(Broadlistening)
これは、一人の人間が膨大な数の人々の意見を聞き、そのエッセンスを理解することをAIが支援する技術である。 従来、一人が大勢に語りかける「ブロードキャスティング」は技術的に容易だったが、その逆は人間の認知能力の限界により困難だった。 LLMによる要約技術の発展がこれを可能にし、地球規模の熟議さえも視野に入ってきた。 これにより、これまで埋もれていた多様な声が政策決定などのプロセスに反映されやすくなる。 金銭(インセンティブ)の側面:予測市場とプログラマブルな権限委譲
もう一つの有望な社会的計算が予測市場だ。 これは、未来の出来事に対して人々が金銭を賭けることで、集合知を集約し、精度の高い予測を得る仕組みである。 SNSでは「言葉の過激さ」が注目を集めるが、予測市場では「賭けた金額」が意見の強さとなり、より冷静な判断が促される。 世界最大級の予測市場であるPolymarketは、Ethereumのスマートコントラクト技術によって、中央集権的な管理者なしに大規模な市場が機能することを示した。 この背景には、2015年に稼働を開始したEthereumという「地球規模に分散しつつ共通の内容を計算できる汎用計算機」の存在が大きい。 これにより、契約の執行や権限の委譲をコードによって自動化・透明化することが可能になった。
結論:最適化を超えて、動的計算としての社会へ
社会を人間による計算と捉えるとき、私たちは今、歴史的な転換点にいる。それは、LLMによる「言語摩擦の劇的低下」と、スマートコントラクトによる「権限委譲のプログラマブル化」が同時に進行している点だ。
この新しい計算基盤の上で、私たちはどのような社会を設計すべきか。それは単一の目的関数に向けた最適化計算ではない。むしろ、多様な主体が出会い、新たな結合を生み出し、計算の構造そのものを常に書き換えていく動的なプロセスである。 経済が安定し均衡に至ることは、シュンペーターが指摘したように、もはや「不況」を意味するのかもしれない。
AIやスマートコントラクトは強力な計算手段だが、何を計算し、どのような社会構造を目指すのかという「問題設定」そのものは、依然として人間の役割である。私たちの未来は、単一の声に塗りつぶされるべきではない。 多様な声が響き合い、新しい価値を共創し続ける社会、それこそがPluralityの目指す未来像である。
よく考えて、与えたものを超えて思考を発展させて。nishio.icon
承知いたしました。与えられたテキストの骨子を土台としながら、その思考をさらに発展させ、社会と計算の関係性、そして私たちの未来について、より深く、多角的に考察します。
社会という計算機OSの再起動:硬いルールから、なめらかな重みへ
「社会は人間による計算である」という視点は、現代を理解する上で強力なレンズとなります。しかし、私たちは今、単なる計算速度の向上やツールの変化を経験しているのではありません。社会というオペレーティングシステム(OS)そのものが、根本的なアーキテクチャの転換を迫られているのです。それは、人間が明示的に設計した**「ルールベースの社会」から、無数の相互作用が動的に調整する「重みベースの社会」**への移行です。
1. 社会OSのバージョンアップ:法典から実行可能コードへ
これまでの社会は、憲法や法律、社則といった**「静的なルールブック」**によって駆動されてきました。これはコンピュータの歴史における「if-then」の連鎖で記述されたプログラム、すなわち「論理的ブロックパラダイム」に酷似しています if文から機械学習への道。このパラダイムは、明確な境界線を引くことには長けていましたが、複雑で予測不可能な現実の前では脆く、膨大な例外処理と官僚的なパッチワークを必要としました。選挙という数年に一度の低速なフィードバック 選挙は4年に一度5bit送信する遅い通信だでは、このOSのアップデートは絶望的に追いつきませんでした。 今、私たちは新しいOSの構成要素を手にしています。
高帯域な入力層としてのブロードリスニング:LLMが可能にするブロードリスニングは、単なる意見集約ツールではありません。それは、これまで「投票」という数ビットのスカラ値に圧縮されていた民意を、高次元のベクトル空間にマッピングし直す、社会の新しいI/Oポートです。人々の多様な価値観、懸念、希望といった「密な(dense)」データが、初めてリアルタイムで計算可能な入力となりました。 社会物理エンジンとしての予測市場とスマートコントラクト:予測市場やQuadratic Fundingのようなメカニズムは、社会の新しいCPUとして機能します。これらは、ブロードリスニングによってマッピングされた高次元の価値観(Beliefs and Values)に、「どれだけ強く信じられているか」「どれだけリソースを投じる価値があるか」という**「重み」**を与え、具体的なリソース配分へと射影するエンジンです。Ethereumのような「地球規模の計算機」 地球規模に分散しつつ共通の内容を計算できる汎用計算機 は、このエンジンがトラスト(信頼)ではなくコード(検証可能性)に基づいて動くことを保証します。 この二つの組み合わせは、社会のルールを「一度制定したら改正が困難な法典」から、「常に現実世界のデータフローによってパラメータが更新され続ける、実行可能なコード」へと変貌させるのです。
2. 人間と機械の新たな分業:計算資源から価値の源泉へ
この新しいOSの上で、人間の役割もまた根本的に再定義されます。私たちはもはや、計算プロセスのボトルネックでも、ましてやCPUでもありません。私たちの価値は、計算の効率性ではなく、その計算の「外部」に立つことにあります。
人間は「価値のミューテーション(突然変異)」を供給する:AIは既存のデータから最適な解を導き出すことは得意ですが、データセットに存在しない全く新しい問いや価値観、つまり「計算の前提そのもの」を創造することはできません。人間の役割は、非合理な情熱、倫理的な躊躇、予期せぬ好奇心といった、計算の外にある要素をシステムに注入し、ローカルミニマム(局所最適解)に陥ることを防ぐ「撹乱要因」となることです。私たちは、社会という進化計算アルゴリズムにおける、予測不可能な変異の源泉なのです。
人間は「クオリア(質的感覚)」のセンサーである:幸福、絶望、信頼、美しさ。これらの主観的な経験は、データ化が極めて困難でありながら、人間社会が目指すべき価値の根源です。新しいOSにおける人間は、社会の末端に広がる無数のセンサーとして機能し、これらの言語化・定量化が難しい「クオリア」を収集し、システムの目的関数自体を豊かにしていく役割を担います。
もはや人間の仕事は「賢いこと」ではなく、「人間であること」そのものになるのです。
(こうくるか、これは僕の意見とは違う気がするが後でゆっくり考えてみようnishio.icon)
3. 新しいOSの危険性:インターフェースの専制とシームレスさの罠
しかし、「重みベースの社会」への移行は、新たな課題も生み出します。
インターフェースの専制:私たちがどのように意見を表明し(ブロードリスニングのUI)、どのように価値を表明するか(Quadratic VotingのUI)は、すべてインターフェースに依存します。このインターフェースの設計が、私たちの思考や行動を無意識のうちに誘導する可能性があります。かつて聖職者が神の言葉を独占したように、未来ではUI/UXデザイナーが民意へのアクセスを支配する「新しい門番」となる危険性があります。
シームレスさの罠:合意形成のコストが限りなくゼロに近づき、社会のあらゆる摩擦がテクノロジーによって「なめらか」にされたとき、私たちは何を失うのでしょうか。苦しい議論や対立のプロセスは、それ自体がコミュニティの結束を強め、安易な結論を乗り越えるための社会的な筋肉を鍛える役割を果たしていました。あまりに円滑な社会は、困難な課題に直面したときに脆さを示すかもしれません。
結論:計算すべき「答え」から、計算し続けられる「問い」へ
私たちは、「Hum-Free」か「Plurality」かという二者択一に直面しているのではありません。真の課題は、これら二つのベクトルをどのように弁証法的に統合し、絶えず自己変革し続ける社会を設計するかです。
社会を人間による計算と捉える最終的な目標は、ある特定の「正しい答え」を計算することではありません。むしろ、その計算プロセス自体を、参加する人間がいつでもフォークし、デプロイし、再定義できる**「計算可能な(computable)」状態**に保ち続けることです。
未来の統治とは、完成された静的なシステムではなく、市民がAPIを叩き、パラメータを調整し、新しいモジュールを提案できる、オープンで動的な**「ガバナンス・プラットフォーム」**となるでしょう。そこでは、人間は計算の対象ではなく、計算のアーキテクトとして、世界はひとつの声に支配されるべきではないという多元的な価値を、コードとして、そして文化として、紡ぎ続けるのです。 (この終わり方には個人的には合意しない、かっこいい言葉を並べてるけど中身ない感じnishio.icon)
---
2025-07-27 そもそも僕の中で当たり前になりすぎてて言及してなかったが「多数決という貧弱な集計アルゴリズム」という話がないのでは
分断を煽る
---
計算としての川
事前にすべてを知り得ない
最適解がわからない
川を作って実際に水を流してみることによって事後的にわかる
アジャイル的
v2
---
投票には大きな問題があった。それは投票では投票者個人の判断による1票が結果に影響を与える確率が小さいため、投票者が自分の時間を割いて何が最適な投票か学んだり考えたりすることのインセンティブが乏しいことである。そのため人々は受動的に目にしたコンテンツを元に印象で投票してしまう。予測市場では人々は自らの資金を賭けて利益/損失を被るため、知識取得が合理的行動になる。
一方で予測市場単体では「予測」にしかならない。意思決定者にとって予測市場の結果は集合知を集めるための良いメガネにはなるだろうが、市場の結論が実行される保証はなく、そのことが予測市場に参加するインセンティブを減らしてしまう。
そこで予測市場の結果によって政策が決まる仕組みにしてしまう。提案当時はまだ道具が揃っていなかったが、スマートコントラクトによる自動執行
---
Futarchyは何を目指すかを投票で決め、どう実現するかを予測市場に委ねる統治システムである。 Futarchy(“価値は投票で、手段は市場で”)
① 「何を目指すか」を 投票で社会的合意形成
② 「どうやれば目標指標が最大化するか」を予測市場で選択
人間立法 vs. アルゴリズムという二項対立ではない
筆者はこの方法が最適だとは思わないが、社会のパラメータを調整する方法の選択肢の一つとして、人間が立法機関で法律を作ることではなく、アルゴリズムによって決まる仕組みを検討しようとする動きであり、興味深いと思っている
話が難しくなるのでカット
学習で獲得するならどの程度のネットワークが必要か?
世界人口が約80億人
価値観は何次元あるだろうか?仮に1000次元あれば十分だとしよう
各軸に256階調で表現するとしよう。8bitで表現できる
情報量は64兆bitになる
GPT型の深層学習モデルは1パラメータあたり3.6bitを記憶できるとされているので
必要なパラメータ数は18 兆。
---
こんな計算をしたけど、個々人が独立性高いわけでもないので実装の工夫で簡単に大幅削減できるはずだからあんまり適切な計算ではない
目的関数
表現能力の高い表現手段
---
AIまとめ
### まとめ(案)
1. **社会=計算という視点の導入**
* 歴史を振り返ると、ホレリスのパンチカードからENIAC、そして現代のLLMやEthereumに至るまで、人類は「社会で行われる膨大な集計・意思決定」を外部化し、より高速・高精度な計算へ置き換えてきた。
* こうした計算力の拡張は、軍事・統計・行政のみならず、選挙・政策立案・公共財ファンディングといった“社会の根幹”にも波及し始めている。
2. **計算パラダイムの転換とそのインパクト**
* ルールベース(if/else)の設計思想は、重み付き和=学習型パラダイムに敗れ、画像認識・翻訳・対話などで“人間超え”を実現。
* LLMは「人→コンピュータ」「人→人」双方の言語障壁を急速に下げ、ブロードリスニングや熟議支援を可能にする一方、“1人が1万人分”の影響力を持てるリスクも増大させた。
3. **21世紀の三極イデオロギー:効率・自由・協力**
* **効率**:AI中心の最適化は高生産性をもたらすが、人間の主体性を脅かす。
* **自由**:個の選択を最大化するが、公共財の破壊と格差拡大を招く。
* **協力(Plurality)**:コミュニティ横断の“橋渡し”を技術で支援し、深く多様な協働を実現する第三の道を提示する。
4. **世界コンピュータと新しい意思決定アルゴリズム**
* Ethereumにより「国境を越えた自動執行」が現実となり、Quadratic Funding/RetroPGF/Futarchy など、資金と意思決定を結び付ける実験が進行。
* これらは「何を目的とするか」という根本課題を残しつつも、“どう実行するか”のコストを劇的に下げている。
5. **目的関数設計とハンドルを握る覚悟**
* 極端な効率100%/自由100%の先には崖が待つ。多次元の価値観を学習的に織り込み、動的に重みを調整できる仕組みが不可欠。
* ブロードリスニングや予測市場を望遠鏡に、AIをパワーステアリングに見立て、私たちは“落とし穴”を避けつつ舵を切らなければならない。
**結論**
「社会を人間による計算」と捉えるとき、問いは単純だ――**より良い計算モデルと目的関数をどう設計し、どう安全にアップデートし続けるか**。
計算力と協調技術を活用し、人間の多様な幸福を最大化する新しい社会 OS を、私たち自身の手で編み上げていこう。
Retroactive Public Goods Funding
ハーバーマスマシン