理性に訴えるだけでは政治を動かせない
from p2025-04-16
理性に訴えるだけでは政治を動かせない
DR.icon
政治理論において古典的には理性対感情の二項対立が語られてきた。例えばルソーやコンドルセら啓蒙期の思想は、公共の理性による一般意志の形成を理想とし、私情や情念は排除すべきと考えた。しかし20世紀に至り、大衆社会の政治現象(全体主義やファシズムなど)を目の当たりにすると、単に理性に訴えるだけでは政治を動かせないことが明白となった。ハンナ・アーレントも全体主義の台頭を分析する中で、大衆の「孤独」や「不安」といった感情状態がイデオロギーへの盲信を生む土壌になったと指摘している。彼女は政治的判断において想像力や共感を働かせ「他者の立場で考える」能力(拡張された思考、sensus communisの政治的行使)を重視したが、それも広義には感情的知性の問題と言えるだろう。