満足な愚者より不満足なソクラテスの方が幸せの総量が多い
@kaityo256: 東大の祝辞、たまに話題になるけど、僕が一番好きなのは平成26年度教養学部学位記伝達式の石井洋二郎先生による「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」の三つの間違いの話ですね。とても面白くて教育的だと思う。 東京大学の卒業式といえば...1964年の3月、当時の総長であった経済学者の大河内一男先生が語ったとされる有名な言葉が思い出されます。曰く、「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」。 当時、私はちょうど中学校にあがる年頃でしたが、この言葉は新聞やテレビでかなり大きく報道されました...
第一の間違いは、「大河内総長は」という主語にあります。というのも、これは大河内先生自身が考えついた言葉ではなく、19世紀イギリスの哲学者、ジョン・スチュアート・ミルの『功利主義論』という論文からの借用だからです。...式辞の原稿を見てみますと、そこにはちゃんと、「昔J・S・ミルは『肥った豚になるよりは痩せたソクラテスになりたい』と言ったことがあります」と書かれています。... 次に第二の間違い...ジョン・スチュアート・ミル自身は「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」とも「なりたい」とも、全然言っていない...
満足した豚であるより、不満足な人間であるほうがよい。満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスであるほうがよい。...
じつは、大河内総長は卒業式ではこの部分を読み飛ばしてしまって、実際には言っていない...これが第三の間違いです。...
あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること、この健全な批判精神こそが、文系・理系を問わず、「教養学部」という同じ一つの名前の学部を卒業する皆さんに共通して求められる「教養」というものの本質なのだと、私は思います。 nishio: そして原文の「満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスである方が良い」って「世界は不完全だから高い能力を持った存在は自分が得られる幸福を不完全だと感じる」って話なんだよね(読んだアピール) nishio: スマホを持ってない人はホテルのWifiがポンコツでも苦痛に感じない nishio: 「満足な愚者と不満足なソクラテス、幸せの総量が多いのはどちらか」(正解はソクラテス)って話もWifiに例えるとわかりやすいかもしれない。 Wifiを使わない使えない人はWifiの調子が悪くても不満に思わなくて、Wifiを使いまくってる人だけが不満足になるけど、Wifiによる幸せを享受するのは後者だけ