政治的なものの概念
『政治的なものの概念』(独: Der Begriff des Politischen)とは、1932年に発表されたカール・シュミットによる政治学の著作である。 人間性についてシュミットは自由主義が論じるような人間の善性を政治理論から排除することを思考した。その事実はともかく人間は悪しきものであると見なすことで、政治権力や国家秩序の理論を構築することが可能となるのである。これは常に敵の存在を前提として考える味方/敵理論に発展することになる。道徳における善悪や美学における美醜、経済における利害のように、政治的なものという概念規定は、とくに政治的な範疇をみいだすことによって得ることができる。それは政治的な行動や動機が還元される固有の徴標である味方と敵の区別である。
従来、日本語では友敵関係、従来の訳は「友」であったが、シュミット自身はラテン語の公敵(hostis)と私敵(inimicus)、ギリシア語の戦争敵(polemios)と私敵(echthros)を区別していることから、私的な「友と敵」ではなく公的な「味方と敵」を念頭に置いており、権左武志による訳でもそのような理由から「味方」と訳されている。