テクノロジーとイノベーション解説
2023-05-07 OCR結果をきれいに整形した
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テクノロジーとイノベーション 2014-07-17 西尾泰和
https://gyazo.com/a3110fba4a29bfbe47a9e878935b48ff
第11章
この最終章ではテクノロジー、経済、生物の3つの関係について議論をしている。 本発表では本書の内容を紹介し、具体例と関連研究を紹介し、最後にまとめて考察を行う。
https://gyazo.com/91e6c1aa06644945209fd458da78e245
紹介
https://gyazo.com/fd3340246082799ca2328a5ef40ac801
考察
なぜ人間の意志を無視するのか?
端はどうなっているのか?
テクノロジーの進化の図式
https://gyazo.com/1cc160c16bf65eb8e3c777f112dcc2e5
紹介1
3つの原理
p.257
1:テクノロジーはすべて要素の組み合わせ
2:要素それ自体がテクノロジー
3:テクノロジーは何らかの目的において現象を利用している
https://gyazo.com/5fad579401ab00b558b08ab31cf4d677
3つの原理に疑問
1:テクノロジーはすべて要素の組み合わせ
2:要素それ自体がテクノロジー
この定義だとテクノロジーは無限に階層が続いていることになってしまうのでは?
→考察1「端はどうなっているのか?」
https://gyazo.com/c32f9564787ccd17561925cf3e8e67d3
3つの原理に疑問
3:テクノロジーは何らかの目的において現象を利用している
たとえば「0による位取り」は?
テクノロジーではない?
→紹介2「テクノロジーが生まれるメカニズム」
https://gyazo.com/6277fe97d6d7dcedb7c1571f37fda3b8
紹介2
テクノロジーの生み出されるメカニズム p.258
ニーズとシーズ(ニーズを満たす効果)の結合
限界に直面する・新しい問題を生み出す
niche: (英)ニッチ(仏)ニーシュ(独)ニーシェ:くぼみ →ハマナス、超好熱菌 ニーズはテクノロジー自体より、人間の欲望から引き出される
https://gyazo.com/e9039e38b4966f511cda9960cf41648d
経済の役割
ニーズを知らせる
商業的に利用可能かのテスト
→「商業的に利用可能」とは「金を払う人がいて、黒字」つまり「人間の欲求を満たして、低コスト」 https://gyazo.com/d4028a33cd10453ab5d2dfaadae74499
経済もテクノロジー
事業・生産手段・制度・組織などの「取り決め」がある
これが次代の「取り決め」の機会を作る
著者「だからテクノロジーと同じ構造だ!」
西尾「『3:テクノロジーは何らかの目的において現象を利用している』は無視なの?!」
→「取り決め」について考えてみよう10
https://gyazo.com/a2ac98697c9f9372de843b6fbe518e70
取り決め(1/3)
例:物々交換(魚と山菜)
物の価値は主観的なので交換によって増加しうる
→何も物が作られなくても価値は生み出されうる
→無体物との交換で価値が生み出された
https://gyazo.com/e3b64bd85e5ca6ef871c73355f956923
取り決め(2/3)
言葉を表現するための記号を取り決めることで同時同場所にいなくても情報を伝えることができるようになった
粘土板と楔形文字
0を用いた位取りでの計算は楽=人間の認知コストが節約される価値(思惟経済) ↑この価値は一人で使っても得られる
よい取り決めが普及することで事後的に標準化
https://gyazo.com/b4cf0861dc7f65e4d211f8728b664ec3
取り決め(3/3)
自然現象を利用しない「取り決め」も価値を生み出し、人間のニーズを満たしうる
経済がテクノロジーというなら、この種の取り決めはすべてテクノロジー
他者との取り決めである必要はない。一人でもその人の認知コストを節約することができる。
https://gyazo.com/109e14edb190142a5aba0465aaf947c2
紹介3
p.260
特に環境の変化が速い時、事前にルールを設計することができない
そこで対話型(インタラクティブ)に変化できるように作る
「環境の変化に適応できる設計」って?→具体例14
https://gyazo.com/239f15775db0d9352cbdd8f2f74db449
環境の変化に適応
https://gyazo.com/074489aad39ecaf9a8af832d0a8399c2
環境の変化に適応
例:スマートフォン
事前にユーザが求める機能を設計し用意するのではなく、ユーザが自分のニーズに応じてアプリを入れることができる
スマホ視点で見ると「事前に知ることが困難な環境(ユーザニーズ)に事後的に適応する仕組み」
https://gyazo.com/27a62c69f70dae3acb625c927d85493e
環境の変化に適応
例:行動情報収集+ソフトウェアアップデート
Excelなど。事前にユーザがどういう操作をするか、どこでつまずくかがわからない。そこでユーザの操作の情報を収集する。その情報を元に改善を行い、ソフトウェアをアップデートする。
https://gyazo.com/ca5d00223ab48a2f1628787d631c4d7c
環境の変化に適応
例:Webサービスの負荷分散(Amazon EC2など)
事前にどれくらいのアクセスが来るかわからないので適切な設備投資ができない。そこでアクセスを観察して事後的に設備を増やす仕組みを導入。
予測不能、判断速度が重要→自動化
自動化によって人間の判断が介在しなくなった!
https://gyazo.com/ae50fcd6d8f6f7ea381eb9e4cbd671ed
生物になる p.261-262
これは「学習」と言ってよいのではないか?
テクノロジーが知性を獲得したのではないか?
テクノロジーが生物学になるのでは?
西尾「『知性の獲得』から『生物学』にギャップが…」「『生物』じゃなくて『生物学』なの??」
→生物について考察2で詳しく考察
https://gyazo.com/2051e244c2e42427161a58a694cb0a99
紹介4
競争優位の源泉
p.265
「リソースを蓄え、それを組み合わせて、生産物を作り出す能力」ではなく
だいたいドラッカーが言ってることと同じnishio.icon
https://gyazo.com/eecc7bcbc8254abbf217f57af67e19d1
競争優位の源泉
産業革命当時の競争優位
リソースをたくさん持っている
加工設備を持っている
知識をたくさん持っている
それを組み合わせる能力を持っている
https://gyazo.com/8033157cbfc6cfd01aa3db142940ec0c
「知識を組み合わせる能力」というと個人の能力と考えられがちだが組織としての能力を増強することも重要
人間の能力は、言語・人工物・方法論によって強化される
https://gyazo.com/6bb8d7bd5eb5cb9d7cae3e39d78d460a
紹介5
テクノロジーとどう向き合うか
p.269
自然を隷属させるテクノロジーと、自然の延長線上にあるテクノロジーの区別が大事
(西尾)あまり重要視してない
https://gyazo.com/4c8061049d269c5fc785b780fafb165b
考察1
人間の意志は?
著者はなぜ「人間の意思」を無視するのか?
https://gyazo.com/cf818b6d43a4784ae1d29680a2a1db73
1970s
自分の遺伝子を残すことに寄与しない「利他的行動」をする個体がいるのはなぜか? その個体視点だと合理的ではないが、遺伝子視点だと一部の利他的行動は合理的
その個体に不利でも同じ遺伝子を持つ別の個体に有利
主体は個体ではなく、遺伝子
https://gyazo.com/d874657c222c2eb1069231e10360c949
情報は人間の頭脳によって複製される
複製の効率が良いものと悪いものがあり、良い物が広まり、悪いものは淘汰される
つまり情報は遺伝子のようなものであり、遺伝子と同じように自然淘汰によって進化する
https://gyazo.com/0781adf64c9260ccc37db9ad484e8123
K.ケリー2011
主語はTechnology
テクニウム=テクノロジーの集合体
生命の進化とテクニウムの進化を比較
https://gyazo.com/4a241f9a279de81119f90286032f1dac
進化に働く力のうち構造的必然性と歴史的偶発性は共通
生命の進化に働く3つ目の力は盲目的な自然選択
https://gyazo.com/ccf2dacdf2705dc9d94c61830e820b29
Q:著者はなぜ「人間の意思」を無視するのか?
「人間の意志がテクノロジーの進化を遺伝的な進化より速くしている原因」とK.ケリーは主張している。これとの差別化?
https://gyazo.com/414ed04ba8365147000b3bb32d3f72aa
考察2
端はどうなっている?
「Xはすべて要素の組み合わせ+要素はX」という定義だとXは無限に階層が続いてしまう。端はどうなっているのか?
最初のテクノロジー、最初の生命、最初の経済
https://gyazo.com/8fb93ad4bf83ed2c00ea5732d19bc149
最初のテクノロジー
枝を使って虫を取るキツツキフィンチ
石の上に骨や亀を落として割って食べるヒゲワシ
食欲というニーズを満たすために現象を利用
組み合わせではない
https://gyazo.com/e49f1b3091c1d9ce9843f734fbc92443
最初の生命
原始大気に放電を繰り返すと、たまたまアミノ酸などの有機化合物ができる
上記実験で作られたアミノ酸が重合してできるペプチドには触媒活性がある→反応を促進する
https://gyazo.com/5e952dce9eea39dd986b9f09a943597b
最初の生命
水と油の疎水性相互作用で形状が維持された球状の物体。アレクサンドル・オパーリンが生命の起源ではないかと主張
(細胞膜:脂質二重層)
…これらのいろいろな要素がランダムに組み合わされる中で、たまたま自己複製の能力を持ったものが増殖したのでは(西尾)
https://gyazo.com/221e3b94d193051ffadf76f2712710b5
最初の経済
菌根菌(などの共生関係) 4億年前
土壌中からリン酸や窒素を吸収して宿主植物に供給し、宿主植物が光合成により生産した炭素化合物を得る
人間の場合:物々交換
魚を提供し、代わりに山菜を得る
https://gyazo.com/a755eafbf965eb7ba632465ed1c4eb22
たまたま
たまたま亀を石に落としたら割れた
たまたま自己複製できるようになった
たまたま交換にメリットがある二者が出会った
最初のXはたまたま生まれる
https://gyazo.com/03b41dcf69dbfd90a8dd000615d64b4c
考察3
ダーウィン的進化
ダーウィン的進化の原理は「ランダム→たまたま成功したものが増える」
ランダム変化 遺伝子 ランダム組み合わせ 個体 自然淘汰 生き残った個体
ランダム変化 知識 ランダム組み合わせ 応用 成功 生き残った応用
https://gyazo.com/412e80e57ad1c4ce0f06dd06584c9173
ランダムを超えて
テクノロジーの進化のメカニズムはダーウィンの進化論と異なる(p.258)
https://gyazo.com/26140a21c45891ac3e194c0a2a1ed2fa
ランダムを超えて
人間の能力は、言語・人工物・方法論によって強化される
人工物→道具・計測機器・加工機器
言語→概念・現象の呼び名の取り決め 例: 「力」
方法論→科学的方法論・実験手法
https://gyazo.com/bb5920dfffd497aefe7d64d30e2a7980
考察4
総合:見落としがないことを十分に確かめて、完全な列挙と再構成により全体を再構成する。 https://gyazo.com/d6e975df3d55c9a89944c68dd771142b
デカルト
もちろん実験や観測データも信用できない。
その理性を使って、すべてを疑った結果「自分の存在」だけは残った
→神を信じ、科学の正しさが疑われた
https://gyazo.com/3d3c291386c347b85c230907e2ad7481
時代背景
1543年、死と共に出版
1637年デカルト「方法序説」
科学よりもキリスト教のほうが強かった時代41
https://gyazo.com/f11d3ef2bc63a1d01535aab0d7a7369b
世界の成り立ち
キリスト教:「神」という絶対的秩序が「世界を作った」という思想 ←いいすぎ
ID説:高度な知性による設計理科教育で進化論と併記 ギリシャ:「世界は生まれ育つ」思想
→現実はそれをかたどって「作られた」
キリスト教: ユダヤ教から超越者の概念を引き継ぐ、中世にプラトンを正当化に使う https://gyazo.com/5019cea7524769e58eff86bfef2deaff
p.267
哲学史におけるキリスト教的価値観との戦いをなぞっている
https://gyazo.com/a2e3dcc70e199c23711d5348f132fcce
考察5
テクノロジーの進化
ダーウィン的進化を超える理由は?
→方法論は何から生まれる?
→淘汰の方向性はどう決まる?
https://gyazo.com/80e1a869238c62f931688cd1e835f7a2
何から生まれる?
https://gyazo.com/22722fdd009411a0cc39fd49246366f1
方法論も階層になっている
方法論は「よい応用を生み出す」という価値を生む決め事
→経済同様にテクノロジー
端は“ランダム"
https://gyazo.com/45cb3619d20fd8c73d5cb83137abd7bf
何が決める?
https://gyazo.com/1936f57f4d1270abf39fcb0a4c38a31b
経済の役割
商業的に利用可能かのテスト
(ケリー)社会の集団的自由意志
市場による加速
予期せぬ成功:狙いと違うニーズを満たす
広く使われているものの改善バイアス
https://gyazo.com/1383fc2d9e28af40f2e65fba8b41080d
まとめ
物だけでなく取り決め=概念も価値を生む
方法論によりダーウィン的進化よりも効率よく「組み合わせ」を探索できる
方法論も階層的なテクノロジー
市場は開放性を高める方向にバイアス
→開放性により要素の組み合わせが複雑化
https://gyazo.com/ec449f9852cdaa4ecec63b67671d16f3
おまけ
プログラミング
関数定義:複雑な一連の処理に名前をつけ、以降その名前でその処理を行えるようにする
=「言語の語句のような設計」(4章)
=認知コストを削減する「取り決め」
=階層的コンポーネント(関数は他の関数を作る部品に使える)
https://gyazo.com/ae40f4d078e32079033d0861564f6396
プログラミング言語の歴史
誕生前:ワイヤーで配線することで計算内容を変更できるコンピュータ
配線は面倒→データを記述することで計算内容を変更できるコンピュータ
データが01001010ではわかりにくい→人間にわかりやすいアルファベットを01001010に変換するプログラム
どういう記法にするかは“決め事"
https://gyazo.com/c88fc9ab0df3295bf29ac2b72e38ee34
プログラミング言語の歴史
類似の処理を何度も書くのは面倒
→プログラム片を再利用するための決め事
決め事を守るのが面倒
→コンピュータにプログラム再利用のための命令を追加(ret)
再利用するプログラムの位置を数値で覚えておくのが面倒
→プログラム片に名前を付ける記法・呼び出す記法、という決め事
→「関数」の概念の誕生