コンセンサスの時代の無関心からの揺り戻しとしてのポピュリズム台頭
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p2025-04-16
コンセンサスの時代の無関心からの揺り戻しとしてのポピュリズム台頭
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現代の政治哲学者
マーサ・ヌスバウム
は、リベラルな社会を維持するには理性的な制度設計だけでなく「
愛と連帯の感情
」が不可欠だと論じている。ヌスバウムの著書『
政治における感情:なぜ愛が正義に必要なのか
』(2013年)では、自由と平等といった抽象理念を支えるために、人々がお互いに基本的人権を尊重しようと思えるような愛国心や共感といった感情を育む必要性が説かれる。これは18世紀の哲学者
ルソー
が提唱した「
市民宗教
」や、
トクヴィル
の指摘した
アソシアーション
(
結社精神
)にも通じる発想であり、単に法律や憲法があるだけでは人々は公共善のために犠牲を払おうとしない、そこに
情緒的な絆
が要るという主張である。ヌスバウムに限らず、政治学者の間では民主主義の安定には「
シビック・パッション
(
市民の情熱
)」が重要だとの議論がある。過度に
コンセンサス志向
で
無味乾燥な政治
が続くと人々は
政治参加への興味
を失い、
ポピュリスト
が巧みに情念を煽って登場する余地が生まれる——ムフの言う「
中道コンセンサスの時代の無関心
」からの揺り戻しとして、昨今のポピュリズム台頭が説明されることもある。
Democratic Politics and Conflict: An Agonistic Approach
Political Emotions: Why Love Matters for Justice | Reviews | Notre Dame Philosophical Reviews | University of Notre Dame