Olson
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マンカー・オルソン『集合行為の論理』(1965)の要点
みんなに効く公共財(非排除・非競合)をつくるとき、合理的な個人はフリーライドするので、特別な仕掛けがない限り集団的利益は供給されにくい。
仕組み(なぜ起きる?)
1. 便益の希薄化:参加者 n 人のグループで公共財の総便益が B とすると、各人の取り分は概ね B/n。
2. 費用の非希薄化:拠出コスト c は各人が丸ごと負担。
3. 合理的計算:多くの状況で B/n < c → 出さない方が得 → みんな様子見 → 供給不足。
グループの3分類(Olsonの「大規模グループの法則」)
特権グループ:ごく一部が大きな便益を得る(または富裕)ため、単独でも出す。→ 供給されやすい。
中間グループ:互いの行動が見え、相互監視・交渉が効く規模。→ 条件付きで供給。
潜在グループ(大規模):一人の寄与の影響が極小で、ただ乗りが常態化。→ そのままでは供給されない。
解決策(オルソンが重視)
選択的誘因(Selective incentives)=拠出者だけが得る“私的”な見返り(または罰)
正の誘因:会員限定サービス、名誉・レピュテーション、職能ネットワーク、保険、限定ツール等。
負の誘因:会費義務、ペナルティ、閉鎖ショップ(組合員でないと働けない)等。
強制:税・法規制(国家のような権力)で拠出を義務化。
小集団化:大きな群れを細胞化/連邦化して可視性・相互性を高める。
臨界少数の後押し:便益を多く享受する「特権」主体(パトロン、リーダー)が初期供給を肩代わりし、裾野を広げる。
成果の可視化:拠出→結果の因果を短く見せ、自分ごと化させる。
Hardin(1968)や囚人のジレンマとの違い
Hardin(コモンズの悲劇):共有資源の過剰利用(競合する資源)。
Olson:公共財の“供給不足”(非競合・非排除)。
囚人のジレンマ:2人ゲームの比喩。Olsonはn人・組織コストまで含めた理論。
具体例
労働組合・業界団体:会費=負の誘因、組合員特典=正の誘因。
オープンソース:多くはフリーライダーだが、小さな強いコアがレピュテーション/雇用機会という私的利得で駆動。
GPT5、よく理解しているなwnishio.icon
気候変動・治安・標準化:大規模ゆえ潜在グループ化 → 課税・規制・補助やクラブ財化が鍵。
デジタル参加設計への含意(応用視点)
「ただ乗りが前提」で設計する:可視化、勲章・称号、限定チャンネル、先行アクセス等の選択的誘因を最初から埋め込む。
細胞化×連携:全国スケールはローカル小集団の集合として運用し、ローカルで相互性を確保。
初期パトロン:臨界少数が“最初に損を取る”設計(基金、マッチング、バウンティ)。
成果短絡:拠出→意思決定・実装までのリードタイムを短くし、効能感を高める。
誤解しがちな点
「人は利他的だから大丈夫」ではなく、制度設計が無いと持続しづらいのがポイント。
オストロム(1990)の知見は自主管理の条件を示し、Olsonの悲観を覆す場面もあるが、見える化・制裁・合意ルールなど結局は“仕掛け”が肝。