Audrey Tangと柄谷行人は2014年に会っている
2014年と2015年に台湾でイベントがあり、柄谷さんとお会いする機会がありました。話をしていて、私たちの視点が似ていたことがとてもうれしかったのですが、柄谷さんが彼自身の角度からこれまでの哲学者について整理してくれたのは、私にはとても参考になりました。
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柄谷行人の "交換モデルX" は、オードリー・タンに大きな影響を与えた
柄谷の考える4つの交換モデルは以下のようにまとめられます。
A: 知り合いと見返りのある交換(政府・国家など)
B: 知り合いと見返りのない交換(家族など)
C: 見知らぬ人と見返りのある交換(市場など)
D (モデルX): 見知らぬ人と見返りのない交換
このモデルXは、オープンかつ無償の交換関係
不特定多数の人々に対して、家族のように必要とあれば見返りを求めずに助け合う関係性
オードリー・タンは、デジタル技術を活用してこのモデルXを実現できないかと考えている
柄谷の哲学的な交換モデルの枠組みを、現代社会に応用しようとしている
デジタルの力で、新しい社会関係の可能性を切り開こうとしている
暗号通貨などの分散型交換モデルと交換モデルXの関係
分散型交換モデルがモデルXの実現かどうか
参加者同士の信頼関係をどう担保するかが重要な課題
知らない人同士の交換では、システムへの基本的な信頼をどう得るかが問題
特に知識の交換のようなケースでは、提供した知識が望まない使われ方をしないという信頼関係が必要不可欠
この信頼関係の構築方法はまだ完全には解決していない(柄谷氏)
一方で、オードリー・タン氏は、モデルXの概念を「みんなとシェアする過程で、あらゆる人と信頼関係を築いていく」ものだと捉えている
ウィキペディアのように、まず公開してから編集を重ねていくというベクトルの逆転
デジタル空間を「未来の可能性を考える実験場」と位置づけ、新しい交換モデルの実現可能性を模索している
技術だけでなく、人間性に基づく信頼関係をどう築いていくかが重要な鍵を握っている
交換モデルXを実現することで、資源の争奪戦がなくなる可能性がある(オードリー・タン)
柄谷氏のモデルXは、自由・平等・友愛という価値を補完するもの
オードリー・タン氏はこの考え方に強く共感している
また、RadicalxChange財団のグレン・ワイル氏の思想も、柄谷氏と同じ流れにある
ワイル氏は、経済学の目的を「人々の協力によってより多くの価値を生み出すこと」と再定義
これはモデルXの考え方と通じるものがあります。
資源が限られていると考えれば奪い合いになりますが、
協力することでより多くの価値を生み出せる
というのがモデルXの主張だとオードリー・タン氏は解釈しています。
そして、このモデルXをデジタル上で実現できれば、現実の政治にも応用でき、資源争いがなくなる可能性があると展望しています。さらには、資本主義に縛られない新しい民主主義の誕生につながるかもしれないと期待を寄せています。
オードリー・タン氏にとって、デジタル空間は未来の可能性を考える実験場なのですね。テクノロジーの力で新しい社会モデルを模索し、よりよい世界を作ろうとする姿勢が感じられます。哲学的な概念を現実社会に応用しようとする野心的な試みだと言えるでしょう。