NAM結成のために
Claude.iconこの文章は、柄谷行人氏がNAM(New Associationist Movement、新連合主義運動)結成にあたって行った講演の内容です。要約すると以下のようになります。
資本主義・国家主義・ナショナリズムは、それぞれ異なる交換原理に根ざしており、相互に強化し合う関係にある。それに対抗するには、個人の自由な契約に基づく非資本主義的な交換・生産・消費の形態を作り出すアソシエーションが必要である。 NAMの組織原則は、地域・関心・階層の各系統から代表を選出し、くじ引きで役職を決める多元的な参加型民主主義である。また、構成員間の活動にはLETS(地域通貨)を用いる。 NAMは資本制の内部で対抗運動を行うと同時に、非資本制の生産・消費形態を外部に作り出していく。そのために、企業、出版、教育などの領域で様々な実践的試みを行っていく。
NAMは一国内の運動にとどまらないトランスナショナルな運動であり、インターネットを通じた情報共有と討議を重視する。構成員一人一人の自発的な創意工夫によって運動を発展させていくことを目指している。
p.83
日本では大正時代に、アナーキスト大杉栄が「連合主義」を唱えていました。この時期までは、「連合主義」という言葉は日本語として通用していたわけです。 しかし、現在、連合主義といっても、よくわからないし、むしろ誤解されるでしょう。 だから、私はこれをあえて日本語ではいわないことにしました。さらに、この運動は最初からトランスナショナルなものであって、外国人にもすぐにわかるようでなければならない。だから、 NAMということにしたのです。 もう一つ、余談ですが、 NAMのことを聞いた坊さんが、それはわれわれにとってありがたい、といっていたそうです。南無阿弥陀仏や南無妙法蓮華経のナムだからです(笑)。もちろん、私は坊さんの参加を歓迎します。たとえば、スペインで少数民族バスク人が作ったモンドラゴンという生産協同組合は、今や、巨大な企業として、世界的に支部を広げていますが、これを始めたのは、カソリックの坊さんでした。仏教の坊さんが見習うべきことではありませんか。 p.108
われわれの運動はインターネットなしにできない...NAMに参加する人はコンピュータをもつか、少なくともアクセス可能な状態にしてほしい、ということです。第一に、これはNAMの財政問題にかかわるのです。手紙やファックスで通信するだけの金も人手もありません。 第二に、各地に住んでいる人たちが迅速に連絡しあうためには、インターネットが不可欠です。 センター評議会はいうまでもなく、関心系、地域系のそれぞれのセクションで、たえず、全員によるメーリング・リストによる連絡や討議が行われます。その結果は、ホームページに紹介される。だから、コンピュータは不可欠なのです。自分はどうしても苦手だという人がいますが、 NAMに問い合わせれば、技術的に助けてくれる人がいますので、連絡してください。
この時代(2000年)にインターネット主体の運動を構想したのはすごいなnishio.icon
最後に、一つ、この場で強調しておきたいことは、自分は何をやればいいのか、どうすればいいのか、そういった問いを、私やNAM事務局に対して、してほしくないということです。それぞれの人が、自分の関心の範囲において、あるいはそれを超えて、創意工夫してやってほしい。そういう人たちのアソシエーションとして、NAMがあるのです。