KJ法の表札をいつ変更するのか
Q: KJ法の表札はいつでも変更して良いというが、いったいどのようなタイミングで変更するのか?
A: これに関しては「感覚」での説明と「論理」での説明があります。この質問をした人は論理で説明してほしいタイプだと思います。ですが「感覚」での説明の方が簡潔なのでまずそちらをやります。
KJ法の表札はどのようなタイミングで変更するのか?
上手く回ってないと感じたときに変えるのです。
やりにくさを感じたときに、やりやすく変えるのです。
その「上手く回ってる」はどんな状態か?
好奇心が刺激され、ワクワク楽しい状態です。
ここから先は、この説明でしっくりこない「論理で説明してほしい人」向けです。
「上手く回ってないと感じたときに変える」ためには、まず自分の行なっていることが「上手く回っている」のか「上手く回ってない」のかを認知する必要があります。
この感覚はまずは非言語的です。ワインにたとえると、あなたがワインの複雑な味や香りを感じることができても、それを言葉で表現できるとは限りません。あなたの語彙力や言語化能力に依存しています。だから、まず非言語的感覚が先にあり、言語は後なのです。
KJ法は知的生産を支援するための手法です。なので「知的生産性が高い状態を作り出すこと」がもっとも重要な目的です。細かいHowToは枝葉末節にすぎません。
知的生産性は投入コストあたりの最終成果物の価値ですが、これを計測することは難しいです。なぜなら、生み出したアイデアが最終的に価値を生むまでには長い時間が掛かるからです。そこでプロセスの生産性に注目します。価値のありそうなアイデアが生み出されることを短期的な目標であるにするわけです。
既にあるアイデアと同じものを生み出しても、価値が低いです。もしあなたが3時間作業して「いつもと同じ結論になった」なら、その3時間の作業は無駄なので、流行りの映画でも見に行った方がよかったのです。
もしあなたが生み出したアイデアにあなたが熱意を感じないなら、そのアイデアの価値は低いです。なぜなら、アイデアは生み出された後で、たくさんの労力を注ぎ込んで育て上げ磨き上げないと、最終的な価値につながらないからです。
アイデアを生み出したあなたが労力を注ぎ込む気にならないなら、他の人がその気になる確率も低いです。結果としてそのアイデアが育って果実を実らせる確率も低いのです。
この「新しいものが生まれて、それにあなたが関心を抱き、熱意を持つ状態が、KJ法が上手く回ってる状態である」を感性で表現すると「ワクワク、楽しい!」になるわけです。
この「良い状態」は、たとえば脳の血流量を測定するなどの方法で定量化できる可能性があります。しかし現在の我々は、まだ日常の業務に使えるような計測手段を持っていません。今使える手段を使うしかありません。それが「感覚」です。
感覚によってあなたが自分の内部状態を知ることは、特殊なことではありません。
例えば:
寒い冬の朝に、あなたがブルブルっと震えて暖かいコーヒーでも淹れようかなと思う時
休日に夜更かししてベッドで面白い小説を読んでいて、続きを読むのをやめてサイドライトを消そうとする時
あなたは自分の内部状態が不適切な状態になっていることを感じて、それを修正するための行動を取っているわけです。
知的生産プロセスの不調も同じように感じることができます。
論理で説明してほしい人は、感覚より論理を重視しているのでしょう。しかし、非言語的な感覚を軽視して使わないでいると、それを感じ取る能力が低下して、なおさら感覚を使った判断が苦手になります。ワインに対して「味も香りもどうでもいい、安くてアルコールが入っていれば良い」と言う人は、ソムリエにはなれません。感覚に注意を払い、それを情報源として使えるようになることが必要なのです。
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