政治の概念を豊かにしなければならない
政治の概念を豊かにしなければならない
(宇野)...今の時代、ともすれば敵と味方をはっきりと分けようとし、味方でないなら議論をしてもしかたないと考えがちです。そういう二分法が横行する時代だからこそ、自分と意見は違うけれど、それでも話はできるという関係を少しでも増やしたい。そうでなければ、この世の中、生きにくくて仕方がないと思う。
(東) 僕もその意見には同感です。宇野さんは「民主主義―』で、人間と人間はわかりあえない、けれども違う価値観を持っている人間がとりあえず一緒に暮らすために共通基盤をつくろう、ルールをつくろう、そうやって政治の役割をせばめた結果、近代では政治の領域がすごく縮減してしまった、もっと政治の概念を豊かにしなければならないと書いていて、まったくそのとおりだと思いました。
p.296
nishio.iconこの「政治の概念を豊かにする」の「概念を豊かにする」に関して、政治以外の領域における関連した過去の思想家の思考を関連付けて解説せよ
gpt.icon「概念を豊かにする」というフレーズは、政治に限定されず、他の領域においても思想家たちが探求してきたテーマです。ここでは、政治以外の領域において「概念を豊かにする」ことに関連する思想を見ていきます。
ハイデガーは『存在と時間』において、「存在」という概念を豊かにすることに取り組みました。それまでの哲学で曖昧に扱われていた「存在」を再考し、単なる「ある」という事実だけでなく、「人間存在」や「時間性」を含めて存在を考えるようにしました。これは、単一的な見方ではなく、多元的・深層的に現象を捉え直す試みであり、政治の概念を豊かにするという意図とも通底します。
ジェームズのプラグマティズムは、固定的な概念にとらわれず、柔軟に物事を理解するというアプローチです。彼は「真理は経験によって変わる」と考え、異なる状況や文脈に応じて概念や理論を再構築することの重要性を強調しました。これは、政治でも固定的なイデオロギーや二項対立にとらわれず、多様なアプローチを認め、概念を豊かにすることに通じます。
プラグマティズムに関しては実際p.298から語られているnishio.icon
ライルは心と身体の二元論に対して、「カテゴリー錯誤」という概念を提唱しました。これは、事物を正しく理解するためには、適切なカテゴリーや枠組みで捉える必要があるという考え方です。異なる概念を適切に位置付け、多様な視点を考慮することで、「豊かさ」が生まれます。これは、政治の中での「分け隔て」を超えた多元的な理解と共通しています。
ドゥルーズは、物事を線形的なツリー構造ではなく、無数に広がる「リゾーム(地下茎)」として捉える思考法を提案しました。これは、単一の視点ではなく、多元的・相互接続的な見方を促進する考え方です。政治においても、既存の二分法や固定化した概念を超えて、新たなつながりや可能性を探求するという意味で、「豊かにする」ことに繋がります。 これらの思想家たちの思考は、どれも「概念を豊かにする」というテーマに関連し、物事を単純化せず、多様な視点や価値観、状況に応じた柔軟性を持つことの重要性を説いています。これらの視点は政治における対立や二分法を超えて、新しい関係性や理解を構築するための基盤を提供しているといえます。